● 18年02月21日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №212 土地ころがしその4 弁護料



裁判にはお金がかかる。一番かかるのは弁護料だ。私たち弁護士は弁護料をもらって裁判をしている。私の依頼者に金持ちは少ない。お金のない人からも弁護料をもらわなければ私は生活できない。そこで弁護料をタダでするのはその事件がその人だけではなく、社会正義のために役立つ時だけである。同和問題で私が依頼を受けた人は自己の不利益をかえりみず、立ち上がった人たちであった。

だから、私の弁護料は無料である。しかし、それでも裁判にはお金がかかる。まず訴状に手数料である印紙を貼らねばならない。また相手に郵送するための切手を予納しなければならない。しかも国は国民がなるべく裁判を起せないように、北九州市などの公共団体を相手にした裁判は行政訴訟とし、本庁である福岡地方裁判所でしか裁判ができないようにしている。そのために保育所の事件や同和奨学金の事件は福岡地方裁判所に提訴しなければならなかった。小倉では裁判ができないのである。

そのために私や本人、支援者は新幹線で裁判のたびに福岡市に行く。相手の北九州市も担当者がゾロゾロと新幹線で福岡市に行く。いつも一緒の新幹線で福岡市に行った。当然交通費が要る。これらの費用を本人から貰うわけにはいかないので私が立替えた。
その裁判の立替金が200万円を超えた時、所長代理の吉野弁護士が言った。

「この赤字をどうするのか」

「どうするって、仕方がないじゃないですか」

「原告からお金がもらえないというお前の気持ちもわかる。しかし、支援の人にカンパ活動をしてもらって運動資金と裁判費用は集めるべきではないか。交通費は別にして、印紙代までうちの事務所で立替るのは間違いじゃないか」。

「そんなことはわかっています。事務所に迷惑をかけるつもりはありません。最終的には私が責任を持って支払います」

「俺はそんなことを言っているんじゃない」

吉野弁護士もそれ以上は言わなかった。やがて、マスコミが同和団体幹部の土地転がしを報道し、北九州市も同和行政を変更した。私の裁判は全て和解し、裁判費用は勿論、弁護料も相手方北九州市から貰うことができた。


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