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● 18年06月11日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士3 №10 筑豊じん肺訴訟―国とは何かを問うた18年4か月を読んで



筑豊じん肺訴訟―国とは何かを問うた18年4か月

著者 小宮 学 海鳥社

筑豊じん肺訴訟の原告弁護団事務局長であった小宮学弁護士が出版社から本を出版した。

初代弁護団長 松本洋一弁護士

私が敬愛する松本弁護士は小説家志望だった。小説を書いては懸賞に応募したが、賞は取れなかった。

ある時、松本弁護士は私に言った。

「佳作までは行くんだが、賞が取れない。そこで相談だが、俺の小説を添削してくれないか。但し、お前ごときに添削させたとあっては末代までの俺の恥だから、誰にも言うなよ。」(※注 もう時効だから、書いてもいいでしょう)

そこでその後、私が添削したが、やっぱり賞は取れなかった。そもそも原作が悪かったし、私には小説を添削する能力はなかった。仕方なく、松本弁護士は本二冊を自費出版した。

一つは「爆発のあと」とういう本で、松本弁護士が原告弁護団長をした山の炭鉱爆発の損害賠償の裁判闘争を書いたものだった。

もう一つは「みこし車に乗る人、担ぐ人」という本で北九州市長選で候補者として闘った経験をまとめたものだった。

私は裁判も市長選も一緒に闘ったので、関心をもって読んだが、売れずに在庫の山になった。

私の本

私も本を二冊自費出版した。一つは「谷市長は間違っている」という本で、北九州市を相手に同和裁判で17連勝した記録である。そこそこ売れた。

もう一つは「ひょうきん弁護士」という本で、ソクラテスの妻も驚く私の妻の悪妻ぶりを書いたものだった。出版披露パーティーをしたら、妻のところにはサインを求める人の行列ができた。

たちまち売れ切れたので、 田邊匡彦弁護士(一緒に黒崎合同法律事務所を設立し、最近殺人放火事件で片岸みつ子さんの無罪判決を勝ち取り、時の人となった)に増刷について相談した。

田邊弁護士曰く

「人は身の程を知らねばなりません、ここで増刷をすれば、松本先生と同じように在庫に苦しむことになりますよ」

私もそうだと思って増刷はやめた。よく考えると、増刷をするだけの価値がある本ではなかった。

小宮弁護士の本

小宮弁護士の本を私は最後まで一気に読んだ。私は読書にも集中力がない。30分も読むと疲れる。いつも5冊ぐらいを並行して読んでいる。塩野七恵の「ローマ人の物語」は5年かかって14巻を読んでいる。

筑豊じん肺訴訟は国の不作為の違法を理由とした損害賠償訴訟で、最高裁で勝利した判例史上に残る訴訟である。民衆の弁護士が勝ち取った最高の判例の一つと思っている。私達は一審で敗訴したが、敗訴した原因を分析し、克服し、高裁、最高裁と勝利した。その裁判闘争の記録は、民衆の弁護士を志す弁護士には必読の本である。ただ記録だけでは面白くない。この本には、小宮弁護士が一審で敗訴した夜、一晩中泣き明かしたことが書いてある。裁判闘争の中で小宮弁護士がどう生きて、どう闘ったかが書かれていて面白い。

筑豊じん肺訴訟原告事務局長の小宮弁護士の本が増刷に増刷を重ねて大勢の人に読まれる事を記念する。


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