※このコラムは北九州地区労連の機関紙「北九州地区労連ニュース」の労働コラムより掲載しています。
● 15年04月16日 労働法コラム

労働法コラム 第10回 限定正社員制度について



黒崎合同法律事務所: 弁護士 平山 博久

 

はじめに

皆様,限定正社員という言葉をご存じですか。

新聞,テレビその他メディア等でこれを中心に115216議論されることも決して多いとは言えないため,初めて聞かれた方も多いのではないでしょうか。

ところで,限定正社員という言葉をご存じのない方でも安部政権の経済政策,通称,「アベノミクス」という言葉を聞いたことはあると思います。

限定正社員とは,安部政権長戦略の一環であり,「職種や勤務地・勤務時間等を限定した正社員」のことを指す用語です。安部政権においては,この限定正社員に関する雇用ルールを整備することが検討されているのです。

 

 狙いは何か

ところで,皆様は,職種や勤務地・勤務時間等を限定した正社員の制度を持ち込むには法律の追加等が必要であると思いますか?

答えは,「新たな法律の追加等は必要ない」です。

それでは,なぜ,安部政権は,限定正社員にかかる雇用ルールを立法等により整備しようとしているのでしょうか?

答えは簡単です。

当該限定正社員の職務や勤務地が消滅した場合に容易に労働者を解雇できるようにするためです。

すなわち,従来の解雇規制法理(特に整理解雇の4要件)の下にそのまま限定正社員を持ち込んでしまうと,ある労働者の職務や勤務地が消滅した場合であっても,使用者において,当該労働者を配置転換することなどによって解雇を回避できるか否かという問題が必ず生ずるため,容易に解雇をすることができません。

そのため,従来の解雇規制法理とは異なる視点からの雇用ルールを整備することで,殊更,限定正社員なる制度を作り上げると共に,容易に解雇できるルールを整備しようとしているのです。

この点,限定正社員制度については規制改革会議の雇用ワーキンググループにおいて検討・報告がなされているところ,同グループの座長が,限定正社員の解雇について,「(正社員と)同じルールが適用されても,当然,結果が異なる可能性がある」と説明したとの報道もなされておりますし,限定正社員の人事処遇ルールについて「就業規則の解雇事由に「就業の場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加することが可能であることを確認してはどうか。」といった点も検討されています。

以上の点からも,限定正社員モデルを普及・促進するという方針の目的は,現行の解雇規制法理を骨抜きにする点にあることは明らかなのです。

 

まとめに

上記グループ報告においては,限定正社員制度の導入により多様な雇用形態を作ることは,有期雇用から無期雇用への転換をより容易にし,雇用の安定化を高めることにつながるとしています。

しかし,このような考え方は,まさに多様なニーズに応えるために多種多様な就労形態が必要であるとして,正社員から非正規雇用への切り替えを促進してきた結果,多くの非正規労働者の権利がないがしろにされているという現状を全く踏まえないものということができます。

非正規雇用問題にしても,限定正社員制度の問題にしても,その導入が使用者側から求められているものであることは明らかであり,そうであるからこそ私たち労働者側がこれに反対していく意思を明確に表明することが必要なのです。


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