● 13年12月02日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №66 くどく しつこく いやらしく①
弁護団は二つの方法をとる以外に道はなかった。
ひとつは警察官同士の証言の矛盾を徹底して突き、その中から警察官が嘘をついていることを明らかにすることであった。もうひとつは裁判所が認定した事実から警察官が嘘をついていることを明らかにすることであった。
3名の警察官のうちの最高責任者高尾健二警備課長に対する尋問は、1985年(昭和60年)12月17日から1988年(昭和63年)10月18日まで約3年間で実に12回(一回2時間)にわたって行われた。合計で丸1日24時間の尋問である。おそらく一人の証人に対する最長の尋問時間の記録であろう。
高尾証人に対しては、芦屋派出所に川上を連れ込むまでの行動について詳細に尋問した。裁判所は「事件は派出所の中で発生しているのだから、早く派出所の中での事件の内容について尋問してください」と再三にわたり介入してきた。
だが弁護団は、これに従わなかった。派出所の中で行われたことは川上の主張と警察の主張ははじめから相反しており、この密室で行われたことをいくら追及しても警察官が本当のことを言うとは思えなかったからである。それよりも、派出所に連れ込んだことの不自然さを追及することの方が警察の嘘を暴くためには重要だった。
高尾証人と部下2人は、夜中の2時過ぎにたまたま一時停止違反をした日本共産党員川上を発見したという。こんな偶然があるはずがない。警備警察はこの日、川上を芦屋派出所に連れ込んでスパイ強要をしようと、当初から計画していたに違いないのである。彼らは間違いなく嘘をついている。
弁護団は3名の警察官がその日何をして何をしなかったのかを詳細に尋問し、彼らがその日にした行為をひとつひとつ確定していった。次にそれらの行為が警備警察や警察官がとるべき方策を書いたさまざまな法律や文献、常識に反していることを徹底的に追及したのである。