● 14年03月01日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №75 芦屋スパイ事件 エピローグ



県警は、前田利明弁護士をはじめ五人の弁護士にこの訴訟を委任した。何故か地元北九州市の弁護士は一人も選任されなかった。

前田利明弁護士は、私がまだ九州大学の大学生でエンタープライズ原子力空母寄港反対で佐世保に行った時の福岡県警本部長であった。彼は警察官の人権を守るために弁護士になったと本に書いていた。

彼は証人の警察官が原告弁護団の反対尋問で答えられなくなった時に代わって弁護人席から思わず答えた。彼は今でも弁護士ではなく警察官だった。そのたびに私は異議を言った。「異議! 証人に答えを教えてはだめです。前田先生、あなたは県警本部長ではなく、今は弁護士です」

裁判も長くなると、休廷の間に前田弁護士とも雑談をいう。衆議院選挙のときでも裁判は行われた。すると前田弁護士は、「安部君、こんなところで裁判をしてていいのか。三浦さんの応援に行かなくてもいいのか」と声をかけてきた。

私は「私がこの裁判に出ないわけにはいきません。選挙は私がいなくとも三浦先生は当選するでしょう」と答えた。

県警が払った弁護料は12年で巨額にのぼるであろう。そもそもこの裁判の請求金額は330万円。判決で認容されたのは、川上の慰謝料30万円、弁護料10万円、合計40万円にすぎない。

原告、支援者、弁護団は盛大な祝賀会を開いてこの金を使った。金のためにたたかったわけではない。同じように県警も金を払いたくなくて争ったわけではない。

原告の側は権力犯罪を暴くため、県警はこれを隠蔽するためにたたかった。負けた県警側の多額の弁護料は税金から支払われた。弁護団が勝ち取った弁護料は判決の容認した10万円にすぎない。

しかし、人生は金ではない。国家権力の犯罪を弾劾して勝利したことが何にもまして最上の喜びである。


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