● 14年02月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №74 芦屋スパイ事件 控訴審②
また警察は、控訴審では二人の警察官の証人申請をした。一人は一審でも調べた警備警察官であり、もう一人は事件当夜の芦屋派出所の当直である。
川上氏が解放された時間が川上氏の言うとおりではなく、警備警察の主張どおりであることを立証するためであった。私達は「緒方盗聴事件における警視庁長官の国会証言でもわかるとおり、警察官は平気で嘘をつくものであり、本件でも嘘をつき続ける。警察官に証言させても、いたずらに裁判に混乱を持ち込むだけである」と反撃した。
控訴審で相手が書いた書面は579頁、私達が書いた書面は492頁である。必死の攻防が繰り広げられた。 私達は口汚く相手の主張を罵った。裁判で勝つためには、準備書面の質と量でも勝たねばならない。警備警察側の準備書面が私達の準備書面よりも長いのは、結審後に警備警察がしつこく255頁の準備書面を提出したからである。しかし、もはや時機を失していた。
裁判所は第2回目の口頭弁論で警備警察の証拠・申し出をすべて却下し、結審した。一審判決を勝ち取るために10年、控訴審ではたったの2回。誠にあっけない幕切れだった。直ちに結審せよといっていた私達も驚いたが、もっとびっくりしたのは警備警察だった。まさか2回で結審することはあるまいとの甘い情勢認織が命取りになった。私達はこのとき、控訴審での勝利を確信した。
1996年12月9日、控訴審の勝訴判決が言い渡された。ここには、私達が分担を決め、くどく・しつこく・いやらしく行った反対尋問と準備書面の成果が事実認定として書かれていた。一審でも認められなかった部分も認められていた。
12月20日、警備警察は上告断念の記者会見をした。「上告の理由がないからしない」というものだった。
ざまあーみろ!この判決の余後効が残っている限り、この勝利の味を噛みしめながら私はうまい酒が飲める。