● 15年03月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №110 第一章 こんちゃんと僕 中の下
あれは政治学の試験の時、僕はどんな問題が出ても書く答えは決めていました。授業に一回も出ていないので、どんな問題が出ても教科書の最初のページを書くことに決めていたのです。
僕は一番に回答を書き終え、こんちゃんに「図書館で待っているから」と告げ、下駄の音高く講堂を出て行ったのです。それから待てど暮らせどこんちゃんは来ません。仕方がなく、こんちゃんの下宿を訪ねると、もう試験も終ったので八幡の実家に帰ったとのことです。早速八幡の実家に行ってみました。
「何で待っているのに来なかった」
「皆の見ている前で、大声で誘うから恥ずかしくてたまらなかった」
「それは配慮が足りなかった」
と謝り、僕の田舎の恋の浦に二人で行きました。一緒に歩いていると、こんちゃんは突然
「私、きれい」と聞きました。
僕は直ちに、にっこり笑って
「中の下」
と答えました。こんちゃんはまた、黙って歩き続けました。何だか気ずまりになって僕は
「僕と結婚しませんか」
と言い出しました。こんちゃんが
「どうして」
と聞くので
「僕は結婚したい。そして仕事をしたい。僕は二年間、福島に行く。結婚するのは弁護士になってからだが、今のうちに決めておきたい。愛はこれから二人がつくり上げていけばいい」
とM嬢に話したと同じことを言いました。
こんちゃんはしばらく考えて
「いいわ」
とその場で返事をしたのです。それから十八年、今でもこんちゃんは僕に聞きます。
「私、きれい」
僕は直ちに
「上の上」
と答えています。