● 15年02月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №109 第一章 こんちゃんと僕 隣の喧嘩は面白い
僕たちの隣に薬剤師の夫妻が住んでいました。この夫婦も僕たちと同じように毎日、よく喧嘩をしていました。
僕たちが喧嘩をしていると隣でも喧嘩が始まります。
「おい、こんちゃん、始まったようだよ」二人とも喧嘩を中止して耳を澄まします。ガタン、ゴトンと物を投げる音にまじり大声が聞こえてきます。僕たちはべランダに走ります。ペランダからは隣の会話がよく聞こえるのです。
「きょうは言うちゃる」
「そうだ、言え言え」と僕は小声ではやしたてる。
「何を言うんね」
「もうちょっと、椅麗に片付けたらどうか」
「片付けとるやないね」
「お前、これで片付けとると言うんか」
「そうですよ」
「これはなにか」
と亭主が何かで打ったようです。
それからガタンと、奥さんが何かを投げたようです。続いて奥さんは手当り次第に物を投げ、亭主は逃げたようです。少し物音が聞こえにくくなりました。
「あなた、風呂場のほうが聞こえるかもね」とこんちゃんは誘います。
「うん、玄関のほうに行ったみたいだ」
隣の玄関は我が家の風呂場と同じ向きなので、ここもよく聞こえるのです。二人は風呂場に移動し壁に耳をつけます。
「人のことばっかり言うて、きのうはあなた、なんで遅かったんね」
「仕事ですよ」
「仕事、仕事って夜の夜中に仕事があるわけないでしょ」
「男には付き合いというものがある」
「付き合い、付き合いって誰と付き合っているか分かったもんじゃない」
「俺が誰と付き合うとるというんか」
「三共の田中さんと怪しいと、私聞いたわよ」
「田中さんとは仕事上の付き合いじゃないか」
「夜の夜中に田中さんと二人きりの付き合いはないでしょ」
「お前、疑うのか」
「勿論ですよ」
「クソ、面白くない。ちょっと飲んでくる」
とドアをバタンと締めて亭主は出ていきました。
こんちゃんと二人
「もうちょっとすればいいのに」
「でも夫婦喧嘩ってみっともないわね]
と話し、こんな夜は二人仲よく眠るのです。