● 15年02月01日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №107 第一章 こんちゃんと僕 べランダ事件



ひょうきん弁護士272僕はこんちゃんとの喧嘩にますます強くなっていきました。

やられたらやり返す、弁護士として最も必要な闘争心を僕は日常的に鍛えあげていったのです。

そして僕はこんちゃんとの闘争で、遂に勝利の栄冠を手にしたのです。

こんちゃんを組み伏せて馬乗りになって

「どうだ参ったか。もう絶対に僕に手をあてないと約束しろ」

と責め立てます。最初は「絶対に降参なんかしない」と言っていたこんちゃんも三十分、一時間を経過して、今日はどうしてもやっつけるという僕の気迫が通じてとうとう「もう絶対に手をあてません」と言いました。

勝ち誇った僕は

「声が小さい。大きな声で言え」と要求します。こんちゃんもとうとう

「もう絶対、手をあてません」

と約束したのです。ついに勝利した僕は立ち上がりましたが、それでもまたかかってくるかも知れないと身構えました。

ところがこんちゃんはプーとふくれてはいましたが、黙って食事の用意を始めたのです。

お互いに口も聞かずに食事を終えるとこんちゃんは食器を洗いながら「ちょっと済みませんが、べランダの洗濯物を取り込んでくれませんか」

と僕に声をかけてきました。テレビを見ていた僕は面倒だなと思いましたが、これ以上こんちゃんとの仲を悪くしたくないので、しぶしぶべランダに出ました。

その時です。

こんちゃんは台所からバタバタと走ってきて、べランダのガラス戸をピシャリと閉めてしまったのです。

「しまった」と思ってももう後の祭りです。

「おい、こんちゃん開けてくれ」

と頼むと、こんちゃんはアカンべーをして

「あんたは頭が悪いのよ。外の風にあたって頭を冷やしなさい」

と憎まれ口をたたき、ひっこんでしまいました。


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