● 15年04月16日 労働法コラム

労働法コラム 第6回 ブラック企業問題とは?



黒崎合同法律事務所: 弁護士 溝口 史子

 

119072最近、メディア等で「ブラック企業」という言葉をよく耳にします。ブラック企業の定義は様々ですが、「若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長企業」を指すことが多く、厚労省も、「離職率が高いなど若者の『使い捨て』が疑われる企業」と表現しているようです。

ブラック企業の典型的な違法行為は、長時間労働、残業代の不払い、管理監督者制度・裁量労働制の濫用、パワハラ等です。たとえば、厚労省が定める過労死ライン(月80時間の残業)をはるかに超える月100〜200時間の残業を強いられた例、コンピューターに1日10時間を超える労働を入力できないようにし組織的に残業不払いをしていた例、名ばかり管理監督者として賞与や残業代が支払われていなかった例、目標達成できないことへの罵倒、単純作業の強要により退職勧奨が行われた例等が、実際に報告されています。このような違法・過酷な労働形態が、多くの若者を自殺や過労死・うつ等の精神疾患に追い込んでいるのです。

ブラック企業の労働者は、過酷な労働により心身ともにぼろぼろになっている上、恫喝により萎縮してしまっており、外部に助けを求めることができなくなっているのが現状です。過酷な労働環境から逃れようと退職を希望した労働者が退職を認めてもらえず、自殺に追い込まれたという悲惨な事例も報告されています。電話やメールでの労働相談でも、  労働者が、企業の報復をおそれ、名前や勤務先を明かそうとしないこともしばしばです。

ブラック企業に使い潰された若者の中には、心身に大きな傷を負い、再就職を含め社会復帰ができなくなってしまう人もいます。また、労働者を使い潰して利益を上げる企業が、健全な企業の経営を圧迫し、経済活動の主流となることも許されてはなりません。

ブラック企業に対抗するためには、労働者の心身を支え、企業とたたかうための社会的支援が必要です。これを受けて、労働組合や政党、NPO法人、弁護士等様々な個人や団体が、ブラック企業の公表や相談窓口の設置などの取組を始めています

 


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