● 15年04月16日 労働法コラム
労働法コラム 第18回 ブラックバイト問題とたたかおう
黒崎合同法律事務所: 弁護士 溝口 史子
「ブラックバイト」とは、学生が学生らしい生活を送れなくなってしまうアルバイトで、低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、シフトを一方的に決められたりすることで、授業や課外活動に参加できない等、学生生活に支障を来すものを指します。また、このような「ブラックバイト」においては、学生の無知につけ込み、サービス残業やセクハラ・パワハラ、ノルマ未達成の場合の商品の買い取り等の違法行為が多く見られます。
この「ブラックバイト」問題の背景には、学生の経済的困窮や、フリーター等非正規労働者の増加があると言われています。東京地区私立大学教職員組合連合の2013年調査によると、仕送り額から家賃を差し引いた生活は1日平均わずか937円だったとのことです。学生は生活費を稼ぐためにアルバイトをせざるを得ず、「ブラックバイトだから。」と簡単にアルバイトを辞めることもできません。
また、非正規労働者依存の社会構造の中で、低賃金・フルタイムで正社員同様の重責を担わされるフリーターが増えました。労働市場でフリーターと競合する学生が、低賃金・強拘束力・重責任の労働環境に追い込まれたのも必然と言えるでしょう。
アルバイトの長時間化、重責化のため、アルバイトと、学業や友人との交流、サークル活動等の両立に悩む学生が増えています。学生時代に十分に学び、能力を伸ばすことができない学生の増加は、将来的な労働力の質の低下につながりかねません。
また、「ブラックバイト」を放置すると、正規雇用労働者数が減少し、非正規雇用労働者の労働条件もますます悪化するという悪循環が生まれます。このような「ブラックバイト」問題に対抗するため、2014年8月、ブラックバイトユニオンが結成されました。ブラック企業対策プロジェクトもHP上でリーフレット「ブラックバイトへの対処法」を無料公開し、「ブラックバイト」に対抗するためのノウハウを提供しています。学生が「ブラックバイト」、卒業後はブラック企業に対抗できるよう、学生の頃から労働法に関する法教育を行うことも重要でしょう。