● 15年08月26日 労働法コラム

労働法コラム 第22回 試用期間について



平山 博久 弁護士

2312961  ある従業員を採用するにあたり、一定の試用期間を置く会社や個人事業主は多いかと思われます。

では試用期間中の法律関係、試用期間終了後の法律関係等についてはどのように考えられているのでしょうか。

2  一般論として、試用期間中の法律関係については難しい言葉で表せば解約権留保付雇用契約であるとされています。

これを言い換えると、使用者は、試用期間中の労働者に対して、留保した解約権を、試用期間満了時点における本採用拒否、という形で通常の解雇よりも広い範囲で行使することができますが、その行使は、解約権を留保した趣旨・目的に照らして、客観的に合理的理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合にのみ許される(本採用を拒否できる)とされているのです。ですから試用期間後の法律関係は、特段の意思表示がなされない限り、原則として雇用契約が継続することになります。

3  ところで、元々、試用期間は、一定期間を定めた上、採用試験や採用面接時点では知ることのできなかった業務適格性をより正確に判断する目的で設定されるものです。

ですから、その試用期間経過時点における本採用拒否の合理性や相当性については、一般の解雇に関する事由の他、使用者が、採用決定後における調査の結果や、試用期間中の勤務態度等により、採用の際の選考では見出せなかった客観的な事情で、この事情を前提とすればそもそも試用期間採用すらしていなかったと認められるものがあるか否かが重要です。

また、業務適格性を判断するに必要な期間として定められた試用期間ですから、その期間の満了より前に留保された解約権を行使するにはより高度の合理性と相当性が必要であるとした裁判例もあります。

4  では、次にその期間の長短についてはどうでしょうか。

あまりに長期に及ぶ試用期間は、労使間の力関係を考慮して、試用期間の趣旨目的に照らして合理的な期間を超えるものであるとして、無効とする裁判例もあります。

また、就業規則で定める期間を超える長期間の試用期間の合意は、労働基準法93条及び労働契約法12条で「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と定めています。ですから、就業規則より長期間の試用期間の合意は無効であり、より短い就業規則上の期間の限りで有効となるという結論となります。

5  試用期間を巡っては様々な裁判例があります。

試用期間中又は満了時点で不当な取扱を受けた場合にはぜひご相談下さい。


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