● 16年02月16日 労働法コラム
労働法コラム 第25回 男性労働者の育児休業取得の現状
弁護士 溝口 史子
最近、男性国会議員が育児休業を取得したいと発言し、議論となりました。国会議員は労働者にあたらないため労働関連法の適用がなく、育児休業中も私達の税金から歳費が支払われる点などで、国会議員の育児休業取得は労働者のそれとは本質的に異なりますが、この議論が大きく取り上げられた背景に、男性労働者が法律上保障された育児休業を取りにくい現実があることを忘れてはなりません。
育児・介護休業法によると、男性労働者は、原則として子が1歳(父母ともに育児休業を取得する場合は1歳2ヶ月)に達するまでの間、育児休業を取得することができ、使用者は育児休業の申出や取得を理由として、労働者に不利益な取り扱いをすることができません。また、休業期間中、使用者に賃金支払義務はありませんが、一定の条件を満たせば、労働者は雇用保険から賃金の50~67%の育児休業給付金を受給することができます。
ところが、厚生労働省の平成25年度調査によると、男性の育児休業取得率はわずか2.03%と伸び悩んでいます。しかも、育児休業を取得した男性であっても、そのうち35.1%は取得期間5日未満、81.3%が1か月未満(平成22年度調査)であるようです。また、月20日以上休業し、育児休業給付金を取得した男性労働者は全体の0.4%しかいないとも言われています。
厚生労働省調査によると、育児休業取得を希望する男性は3割に上るそうです。男性の育児休業取得率が伸びない原因としては、職場の雰囲気や無理解、制度の不整備等が挙げられています。
安部首相は「女性が働き続けられる社会」を目指し、男性の育児休業取得を促進すると宣言していますが、男性が育児休業を取得し、子育てに向き合うことができるにはほど遠いのが現状です。スローガンを掲げるだけでなく、男性が育児休業をとることが当たり前になるような世論喚起や、育児休業取得のための具体的な制度作りの促進が必要ではないでしょうか。