● 16年03月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №145 第二章 闘う弁護士 谷市長事件 (一)
事件が起こったとき、新聞は「谷市長肋骨を折る」という見出しで報道した。左第七、第六肋骨骨折の診断で約一ヶ月の安静加療が必要と報道した。そして、戸畑署は傷害と暴力行為の疑いで捜査を始めた。
ところが、裁判で谷市長が認めたように、事件の翌日に谷市長は親類の結婚式に出席し、フクニチ新聞によると翌々日には登庁している。
そして起訴状は、なぜか傷害の点は全くふれておらず、昭和43年10月16日、北九市職労の幹部三名が公務執行妨害罪で起訴されたのである。傷害で起訴されなかったのは、その証拠がないからである。このようなデッチ上げ事件を私達は『刑事弾圧』という。起訴状は次のとおりである。
「被告人らは北九州市役所職員労働組合(以下北九市職労という) の本部副委員長と青年部長、会計監査であるが、北九市職労においては北九州市議会昭和43年3月定例議会に、議案上程された一連の合理化条例に反対し、同年3月19日午後8時頃より、北九市職労所属組合員100名を動員して、開会中の同市戸畑区新池一丁目所在の同市議会議事堂廊下に座り込み、激しく抗議を行っていたところ、同労組員数十名と共謀の上、同日午後9時43分頃、同市議会議事堂二階湯沸場前付近廊下において、予算特別委員会に出席中の同市長谷伍平が右特別委員会第一分科会場から同第二分科会会場に移ろうとするのを認めるや、これを阻止しようとして、同市長に対し口々に『谷が出てきた。包め包め』『谷を逃がすな』等と怒号し、その全面に立ち塞がり、同市長が『逃げるのじゃない、第二分科会に出席するのだ。道をあけてくれ』と大声で同分科会に出席する旨を告げるも、さらに『包め、包め』 『わっしょい、わっしょい』等の掛け声に合わせ、互いに腕を組み等して集団となり、同9時52分頃まで、同市長を押す、揉むなどして共同して暴行を加え、同市長を前記第一分科会に押し戻し、同市長の第二分科会への出席を阻正し、もって公務の執行を妨害したものである」
こうして長い長い裁判が始まった。本件事件が発生したとき、起訴された北九市職労幹部は現場にいなかった。混乱が起こったことを聞き、責任者として直ちに現場に駆け付け、組合員を制止しようとした。しかしこの混乱の中である。もはや止めようがなかったのである。
被告人らはいずれも無罪である。