● 16年04月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №150 第二章 闘う弁護士 谷市長事件 (六)
谷市長への私の尋問が続く。尋問の目的は、労組員には谷市長の公務を妨害するつもりはなかったことを、市長の口から証明することにある。
私 「あなたは組合員ではないけれども、その時現場にいて、第一分科会から第二分科会へ行くのを阻止されたと証言している。その直接の体験者に、労組員はなぜ第一分科会から第二分科会へあなたが行くのを阻止したのか尋ねているのです。人間の行動には目的があるはずです。その目的をあなたに聞いているのです」
市長 「私には分かりません」
私 「あなたは『逃げるのじゃない、第二分科会に出席するのだ』と言ったと証言していますね」
市長 「はい」
私 「そうすると労組員があなたに『逃げるのか』と言ったのでしょうか」
市長 「はっきり記憶がないが多分そうだろう」
私 「そうすると労組員はあなたが逃げると思っていたのではないでしょうか」
市長 「それも私には分かりません」
私 「そのとき、労組員は『ワッショイ、ワッショイ』と騒いでいましたね」
市長 「はい」
私 「随分混乱して、押し合いへし合いしていましたね」
市長 「はい」
私 「そうするとあなたが『逃げるのじゃない、第二分科会へ行くのだ』と言っても労組員には聞こえないのではないでしょうか」
市長 「聞こえたかどうか私は労組員ではないから分からない」
私 「ところで、あなたが『帰るのではない、第二分科会に行くのだ』と、そこにいた人達の誤解を解くつもりで言った発言、これを労組員が聞いたとしても。一体労組員はあなたの発言を信じたと思いますか」
市長 「それはわかりません」
私 「この昭和四三年というのは、ちょうどあなたが市長に就任してからいろいろ合理化をやって、市職員との摩擦も大変大きかったときではありませんか」
市長 「そうです」
私 「そういう意味では悲しいことかも知れませんが、労使の不信感がかなりあった時期ではありませんか」
市長 「不信感ということはどういうことか分かりませんけれども、双方の意見の対立があったことは事実です」
私 「そうすると、あなたの『帰るのではない』という発言が聞こえた人でも、信じなかったということはあり得るのではないでしょうか」