● 16年05月21日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №153 第二章 闘う弁護士 医療事故裁判(一)



img-521153150-0002井上医師より電話があった。

「私の知人がアレルギー性鼻炎の治療を受けている途中で死亡しました。奥さんが裁判をしたいというので、先生引き受けてもらえませんか」

「何で死んだんですか」

「薬物ショックですね」

「先生から見て、治療した医師に責任がありますか」

「薬には必ず副作用があります。薬物ショックはよく起こります。だから薬物ショック自体は防ぎようがなかったかも知れませんが、問題は事故が起こった後の処理です。この後の処理は専門外ですから、すぐ救急車を呼んで健和会か市立病院に回すべきではなかったかと思います」

「どうでしょうか。救急処置が正しければ助かったんでしょうか」

「助かったどうかは判断出来ませんが、救急医療は昔と比べて随分進歩しまして、今では一旦停止した心臓をまた動かすことすらできるようになりました。私は立場上、表に立って協力することはできませんが、分からないことがあればいつでも聞きにきて下さい。一度、先生も救急医療の現場を見ておいた方がいいでしょう。私が手術するときには連絡します」

手術を見学し、市立小倉病院にある市立図書館に通い、アレルギー性鼻炎の治療方法と救急医療について研究する。また薬物ショックに関する裁判例を調査する。

私は医師ではないから、医学一般について医師以上に知識を持つことはできない。しかし、医療過誤が起こったその部門の知識をもつことは可能である。そもそもその分野で医師以上の知識を持たなければ、裁判に勝つことは不可能である。勉強さえすれば、この耳鼻科の医師がどうすれば良かったのか私にも理解できるようになる。医師の過失が私にも分かったとき、私は相手方の医師に内容証明郵便を出し、示談する気があるのなら、私に連絡するようにと通知する。医師より連絡があり、「自分には責任がない」という。医師も人間である以上間違いをする。問題はミスをした後の対処の仕方である。この医師も事故直後は被害者の遺族に責任を認めるようなことを言っていた。それが具体的に損害賠償請求されると、自分には過失がなかったと開き直ってくる。こんな医者は許さない。直ちに訴訟を起こした。


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