● 16年06月01日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №154 第二章 闘う弁護士 医療事故裁判(二)



img-531155241-0001被告の田村医師の尋問を行う。

私 「薬物ショックの場合、第一次的に使うべき薬物、注射は何ですか」

田村 「ボスミンだと思います」

私 「どんな本を読んでみても、ボスミンと書いてあります。ところがあなたの警察に対する供述調書によるとボスミンを打つたという記載がありませんがなぜですか」

田村 「説明不足です」

私 「どうして薬物ショックの場合、最も重要なボスミンの注射を説明しなかったのですか」

田村 「これは、今でこそ解剖して薬物ショックという判断が下されておりますが、事故発生当時に薬物ショックか心臓性のショックか判断がつきませんでした」

私 「だからボスミンは打たなかったのでしょう」

田村 「そうです。いや打ちました。デカトロンを打った後に打っています」

私 「ならばどうしてあなたの供述調書に記載がないのですか。あなたの供述書には『デカトロンというショックを起こしたときの治療剤を0.5cc左上腕部に皮下注射をしました。しかしみるみるうちに顔が蒼白になり、容態がおかしくなりました。このため親しい開業医の山本医師外三名に応援を求め、心臓マッサージ、ブドウ糖の点滴、ネオフェリン皮下注射、呼吸しやすくするための気管切開等をしました』と記載されています。何も書かれていないなら別だが、あなたのした処置はちゃんと記載されている。それに記載されていないということはあなたがボスミンの注射をしなかった何よりの証拠ではないか」

田村 「でも私はボスミンの注射をしました」

私 「どこにしましたか」

田村 「皮下注射です」

私 「救急医学の本によると、こんな場合には静脈にしたほうがいいとなっていますが」

田村 「理論的にはそういうことになりますが、ああいう緊急の場合には理論的にはなかなかいきません」

私 「なぜいかないんですか。私はどうしてあなたは本に書かれたとおりにされなかったのですかと聞いているんです」

田村 「本に書いてあるとおりにできたら、我々はどんな患者でも…」

私 「助かるでしょう」

田村 「助かるでしょうが…」
私の勝利は確定した。


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