● 16年12月12日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №172 第四章 労働仮処分必勝法 その2 事件の顔と裁判官の顔を見つめよう!



事件にはその事件ごとの特徴がある。全く同じ事件は存在しない。ちょうど人間にそれぞれの顔があるように、事件にも顔がある。

労働仮処分でも同じである。同じ地位保全の仮処分でも、その事件ごとの特徴があり、どこが相手の弱点であり裁判官がその事件についてどう考えているかを知ることによって、私達は勝利することができる。

まず第一に、裁判に勝つためにはその担当裁判官がどんな人間なのか知らなければならない。裁判官の顔を知らねばならない。東京では難しいかもしれないが、田舎では何度も同じ裁判官で和解交渉をしたり判決をもらうので、だいたいのところは分かってくる。

頭の良い裁判官には理屈で攻める。心の優しい裁判官は人情で攻める。いいかげんでどうでもいい裁判官や気の弱い裁判官は強い決意を示して力で攻め落とす。

力とは暴力のことではない。正義の力である。どんな裁判官なのかという判断を誤ると勝つ事件を落としてしまう。

裁判所は多くの場合、強い者の味方である。従って、私達が強くならなければ裁判には勝てない。強くなるにはどうしたらよいか。私のやり方はワンパターンである。

まず、私が正義であることを主張・立証し、相手がいかに悪いかを主張・立証する。そして、正義の味方であるはずの裁判所はどうするのかと詰め寄る。こんな悪いやつを許すのかと迫る。己の正義に確信をもち迫力をもって迫れば、裁判官も「そうかなあ」と思ってくれるものである。私も頭は良くないが、裁判官も似たようなものだ。いかに事件を単純にして正義と悪の闘いにするかがカギだ。単純化することによって裁判を大衆化することも可能になる。

あさひ保育園の保母さんが園児の定数減を理由に解雇された。

保育園の収入は措置費として北九州市から支給を受け、園児の数によって決定されるので、収入を増す方法はない。支出の方も保母さんの給料等であり、切り詰めようもない。その限りでは保母さんの解雇は誠にやむを得ないのである。

そこで、解雇の手続きの合理性に争点をしぼった。この事件では希望退職の募集をしていなかった。この弱点を最大限に突いた。勝利のカギはここにしかなかった。一審、二審と勝ち続け、昭和58年10月27日最高裁でも勝利した。

しかし、あの悪名高き最高裁でなぜ勝利したのかは私にもわからない。私は最高裁の裁判官の顔を知らない。最高裁に係属して数年たっても判決が出ない時、「これは危ない」と感じ、私は依頼人に和解するよう説得した。しかし、労働者は偉い。私の日和見主義の和解勧告を断固拒否した。最高裁の判決で勝利し、職場に戻っていった。


<< >>