● 12年07月30日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №18 行列のできる法律相談所 北村弁護士に勝つ②
一審は私が全面勝利したが、北村弁護士が控訴し控訴審が始まった。
裁判長が入廷し、私たちは立ち上がり、裁判長と一礼した。その後裁判長は「控訴代理人、お名前をどうぞ」と切り出した。
北村弁護士は(俺を知らんのかと)不服そうに例のぶっきらぼうの口調で「北村晴男です」と名乗った。
裁判長は私には名乗れとは言わない。ここは福岡高等裁判所である。ここでは私はそれなりに著名な弁護士であるから、私を知らない裁判官はめったにいない。安部弁護士はいつも被控訴代理人ですねとヨイショしてくれる裁判官もいた。一審で負けて控訴する代理人を控訴代理人、勝って控訴された代理人を被控訴代理人という。私は今回と同じようにいつも被控訴代理人だった。
裁判長は言った。
「一審はこのような判決ですが、解決の方法としては和解もあると思いますので、安部弁護士はどうですか」
「このような事件の場合、和解ということは私も考えまして、提訴する前に相手方に話し合いをしたいと提案をしました。すると北村弁護士が私の事務所に来られて、保険会社の言い分だけを言われて帰られました。やむなく裁判をしたのです」
「北村弁護士はどうですか」
「もちろん和解する意思はございます。そもそも安部弁護士は訴状を保険会社に送りつけてイエスかノウかとおっしゃるものですから、保険会社の言い分を言って帰りました。そもそも安部弁護士の所に行ったとき、安部弁護士から和解の話はなかったですよ」。
「私の方から和解の話はしなかったけれども、訴状を送って話し合いの意思があると言えば和解だとわかるはずでしょう」
裁判長があいだに入った。
「まあ、まあ、先生方はどちらも強気の弁護士さんのようですから和解の提案は口がさけても言えなかったのでしょう。これから話し合いをしましょう。別々に話を聞きます。北村弁護士からどうぞ」
小倉タイムス より転載