● 14年05月21日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №83 安川電機の思想・女性差別是正裁判④



裁判に20年もかかるということは間題である。しかし、時問の経過は反対尋問にとって有利である。

まず、私達は上司に「あなたの記憶力は良いか、悪いか、普通か」と質開する。私が同じ質問を受ければ正直に「悪い」と答えるところであるが、上司は10人中10人「普通」と答える。「悪い」とは言えないし、上司は「弁護士は記憶力がいい」と誤解しているので、「良い」と答えることもできない。

次には、原告らは「普通の社員だったか」「何か特徴のある社員だったか」と尋ねる。すると上司は「普通の社員だった」と答える。

当初証人に立った上司は直属の上司である。部下は10人位しかいなかった。ところが私達が厳しい反対尋問をするために、直属の上司は証人に出ることを嫌がった。そこで上司の上司で部下が100人もいる係長とか課長とかが証人に出るようになった。

私達は「記億力が普通のあなたが、普通の社員であった原告の20年前の行動について記億しているわけがないでしょう」と追及する。すると結局印象しか残っていないと証言せざるを得ない。

「陳述書の作成年月日は平成7年3月28日になっておるんです。20年近くも前のことを平成7年になって書くわけですよね。当然記億も薄れてきますよね」。

「はい」。

「殆ど印象ぐらいしか残っておらないんじゃないですか」。

「まあそうですね」。

本当は日本共産党員であった原告は特別の対象なので、上司は記億していたかも知れないが、そんなことは証言できない。

また上司の証人達はほとんどが証言をした経験はなく初めて法廷で証言する。緊張している。しかも、弁護士は優秀であると誤解している。

私達は20年間反対尋問を続けてきた。そして、どの証人がどんな証言をしたか、被告会社の反共攻撃のやり口など、記録を読むことによってこの裁判の全体が分かっている。圧倒的に私達弁護士の方が有利である。


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