● 24年04月24日 労働法コラム
労働法コラム 第33回 採用内定取消について
弁護士 平山博久
1 はじめに
この時期は新社会人を多くみかける時期です。他方で、社会人予定者の方が内定を取り消されるというケースも少なからず存在します。
そこで、今回は、内定をめぐる法律関係について整理をしたいと思います。
そこで、今回は、内定をめぐる法律関係について整理をしたいと思います。
2 採用内定により生じる法律関係
まず、採用内定による法律関係については、様々な考え方がありますが、端的に労働契約が成立したと考えるケースが多いと考えられます。
すなわち、企業による募集⇒労働者の応募(労働契約申込み)⇒企業の内定通知(労働者の申込に対する承諾)と考えるわけです。裁判例においてもこのような考え方を基礎として、具体的事例における法的保護の在り方を考えているものが多いと考えられます。
この点、「内定」とは別に「内々定」(内定の前段階である内定)という言葉を聞くことがあると思いますが、結局は、内定か内々定かという言葉の問題ではなく、実質的にみて、労働契約申し込みと承諾の二つが認められるか、という当事者の認識や通知等に関する具体的やり取りがポイントとなります。
すなわち、企業による募集⇒労働者の応募(労働契約申込み)⇒企業の内定通知(労働者の申込に対する承諾)と考えるわけです。裁判例においてもこのような考え方を基礎として、具体的事例における法的保護の在り方を考えているものが多いと考えられます。
この点、「内定」とは別に「内々定」(内定の前段階である内定)という言葉を聞くことがあると思いますが、結局は、内定か内々定かという言葉の問題ではなく、実質的にみて、労働契約申し込みと承諾の二つが認められるか、という当事者の認識や通知等に関する具体的やり取りがポイントとなります。
3 採用内定者の法的保護とその限界
内定が労働契約の成立であったとしても、いまだ就労開始前の段階ですから、その保護が就労開始後の労働者と比較して弱いことは否定できません。
例えば、採用内定の取消事由が内定通知書や誓約書等に記載されており、これに該当する事由が生じた場合に取り消されることがありますが、通知書に記載されているからといって、その事由の全てが当然に適法な内定取消自由になるわけではありません。
この点について、採用内定取消が適法となるのは「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない」事実が後に判明し、それにより採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当」と認められる場合に限られるとした裁判例もありますが、一般的な解雇よりは緩やかな基準で認められるべき、との考え方もあるため、注意が必要です。
例えば、採用内定の取消事由が内定通知書や誓約書等に記載されており、これに該当する事由が生じた場合に取り消されることがありますが、通知書に記載されているからといって、その事由の全てが当然に適法な内定取消自由になるわけではありません。
この点について、採用内定取消が適法となるのは「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない」事実が後に判明し、それにより採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当」と認められる場合に限られるとした裁判例もありますが、一般的な解雇よりは緩やかな基準で認められるべき、との考え方もあるため、注意が必要です。
4 具体的手続き
違法な採用内定取消がなされた場合、その取消は無効ですから、無効な解雇をされた場合と同様、労働契約上の地位確認や賃金請求をしていくことが考えられます。
また、内定を受けたことで就職活動を中止して、労働に向けた準備をするという労働者もいるでしょうから、その法的期待権を保護する必要があります。そのため、債務不履行(誠実義務違反)や不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償請求をしていくことも考えられます。
また、労働契約が成立したと認めることができない内定前の段階であったとしても、使用者は、労働契約の成立へ向けて信義誠実に交渉をしていく義務を負うと考えられますから、その義務違反があった場合には損害賠償責任を負うことが考えられます。
このように採用内定が認められる場合には将来労働者となることを前提として相応の法的保護が与えられており、また、採用内定とは認められない場合であっても不誠実な交渉手続きをとった使用者が入社希望者に対して損害賠償責任を負うことがあるのです。
また、内定を受けたことで就職活動を中止して、労働に向けた準備をするという労働者もいるでしょうから、その法的期待権を保護する必要があります。そのため、債務不履行(誠実義務違反)や不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償請求をしていくことも考えられます。
また、労働契約が成立したと認めることができない内定前の段階であったとしても、使用者は、労働契約の成立へ向けて信義誠実に交渉をしていく義務を負うと考えられますから、その義務違反があった場合には損害賠償責任を負うことが考えられます。
このように採用内定が認められる場合には将来労働者となることを前提として相応の法的保護が与えられており、また、採用内定とは認められない場合であっても不誠実な交渉手続きをとった使用者が入社希望者に対して損害賠償責任を負うことがあるのです。