法律相談Q&A
借金・債務整理
Q
借金があって支払いが苦しいのですが、どのような解決方法がありますか?
主な解決方法としては、①任意整理、②特定調停、③個人民事再生、④自己破産があります。
大きく分けると、①は裁判所を介さない手続、②~④は裁判所で行う手続きになります。個人の事情に応じて、適切な方法を採ることが重要です。
Q
任意整理手続について
裁判所を通さずに、消費者金融等と任意の交渉での解決を目指す方法です。基本的には、和解日以降の利息をカットしてもらい、分割して支払う制度になります。整理を希望する一部の借金のみを対象にすることもできます。
Q
過払金請求について
貸金について利息制限法に従って計算し直した場合、金融会社の計算では残金が残っていても、実際は過払いとなっており返還請求できる場合があります。但し、最終支払いから10年以上経過している場合は、原則として時効が完成しているので、請求しても認められません。
Q
特定調停手続について
裁判所を通して行う制度になります。任意整理と同じように、和解日以降の利息をカットしてもらい、分割して支払う制度になります。
Q
個人民事再生手続について
裁判所に申し立てを行い、原則として負債の5分の1程度を、3~5年で分割して支払うことを裁判所が決定する手続です。
住宅ローンだけを残して、その他の債務を対象に行うこともできますので、持ち家のある方は、家を所持したまま債務を減額することが可能です。
Q
自己破産手続について
自己破産の手続きは、すべての負債と財産を裁判所に申告しておこなう手続です。換価・配当という(生活に必要な最低限の資産を残して)今ある財産をお金に換えて債権者に配る手続と、免責という債務の支払い義務を免除してもらう手続きの2つの手続を行います。
財産がある場合や、法律上の免責不許可事由(浪費やギャンブルなどへの利用)がある場合には、破産管財人という第三者の弁護士が裁判所から選ばれ、調査がされることになります。
また、税金や罰金等、そもそも免責の対象にならないものもあります。
交通事故
Q
私は専業主婦ですが、追突事故に遭い、3ヶ月間はほぼ毎日病院に通院しました。
幸い後遺症は残りませんでしたが、私はどのような請求ができるでしょうか?
請求項目としては治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料となります。
休業損害については、専業主婦の場合、賃金センサスの女性平均賃金を基礎収入として計算します。例えば、令和6年は419万4400円とされています。したがって、休業損害は最大で419万4400円÷365日×3ヶ月(91日と仮定)=104万5727円となりますが、毎日通院していたとしても、事故日から通院最終日まで主婦として働けない割合は逓減していきますので、その割合をどう考えるかは個別判断となります。ただし、これはあくまで裁判基準(=弁護士が代理人となって交渉する場合)であり、弁護士が関与しない場合は、自賠責保険基準や任意保険会社基準で保険会社が算定してきますので、この基準よりも安い提示額となります。
慰謝料はいわゆる「むち打ち症」で3ヶ月通院した場合は、53万円(赤本Ⅱ基準)とされますが、これも裁判基準であり、保険会社基準はこれより低額になっています。
弁護士を代理人として交渉した方が、損害賠償請求額が増える可能性が高いといえます。特に弁護士特約が付いている保険に加入している場合は、弁護士に依頼した方がいいでしょう。
Q
夫が交通事故で死亡しました。私は専業主婦で小さい子どももいます。
死亡時42歳、前年の年収は500万円でした。幾ら請求できますか?
請求できる項目としては、葬祭費用、逸失利益(将来受けたであろう収入)、慰謝料となります。
逸失利益については、労働能力喪失期間25年、それに対する中間利息控除(ライプニッツ係数)17.8768、一家の支柱としての生活費控除30%として計算すれば、500万円×(1-0.3)×17.8768=6256万8800円となります。
慰謝料は、一家の支柱であれば裁判所基準(赤本)で2800万円とされています。妻や子にも独自の慰謝料請求権が認められていますが、慰謝料総額としては、そんなに増えないことが多いと思われます。慰謝料も保険会社基準ではもっと低くなります。
更に、夫に過失があれば、過失相殺されます。その残額から自賠責保険からの支払等の既払額を控除した金額を請求することになります。
Q
私は交通事故によるむち打ち症で通院治療中です。しかし、任意保険会社が事故から3ヶ月経ったので打ち切ると言ってきました。どう対応したらいいでしょうか?
治療を打ち切るかどうか(これ以上治療しても症状が改善しないかどうか)は医師が判断するものです。まずは、通院先の医師に今後も治療を続ければ症状が改善される見込みがあるか、治療打ち切りをするとその目処はいつくらいかを確認して、任意保険会社と交渉することになります。治療期間については、任意保険会社から医療機関に医療照会されることもあります。医師が治療継続の必要性があると言っているのに、任意保険会社が勝手に治療費の支払いを止めてしまった場合は、①自賠責保険の被害者請求手続きをする、②健康保険を使って治療を継続する等の方法が考えられます。後者の場合、裁判所が認めてくれれば、打ち切り後の治療費や慰謝料・休業損害の上乗せ請求も可能になる場合があります。
Q
私は自営業者ですが、交通事故に遭い休業損害を請求しています。収入については、実際よりも少ない額しか申告していなかったところ、任意保険会社は申告した年収を前提した計算しかできないといってきています。どうしたらいいでしょうか?
原則として実際の収入を前提に休業損害額を算定すべきです。実際の収支状況が明らかとなる帳簿や伝票類を任意保険会社に開示し、実際の収入を査定して貰うことが考えられます。収入資料を提示しても保険会社が態度を変えない場合は、訴訟提起して裁判所の判断を仰ぐことになります。
Q
私は交通事故の被害者であり、子ども1人をパート収入月額15万円で生活しています。家事労働は私がしていますが、専業主婦でないと主婦としての休業損害はもらえないのでしょうか。
任意保険会社は、主婦としての休業損害を認めない対応をしてくる可能性がありますが、判例上は、主婦としての休業損害が認められます。ただし、給与収入分と2重に貰える訳ではなく、主婦としての休業損害額の方が多ければ、その限度で認められるにすぎません。
Q
自賠責の後遺障害認定手続きで非該当とされてしましましたが、まだ症状が続いており、納得できません。このような場合どうすればいいでしょうか。
自賠責調査事務所に異議の申立をすることができます。ただし、単に不満だというだけでは通常結論は変わりません。受けていなかった神経学的検査を受けてみる、主治医に新たな意見書を書いてもらう、症状固定後も自費で通院を続けていることを証明するための領収書や診療報酬明細書、どのような症状が残り、生活するうえでどのような支障が出ているかについての陳述書などの追加資料を提出することが必要でしょう。それでも、結論が変わらなければ、自賠責保険・共済紛争処理機構へ申請したり、訴訟提起して裁判所に独自に後遺障害の有無、程度を判断して貰うことも可能です。
Q
駐車場で私が駐車場の通路から駐車枠に車を入れていたときに通路を進行してきた車と衝突しました。相手方は直進車優先だから、私の方の過失が大きいと言ってきています。相手の言い分は正しいのでしょうか。
過失割合は、裁判所の「過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ№38)に記載されている類型に当て嵌めて判断するのが一般的です。本件では、【336】類型に当て嵌まり、原則として駐車区画進入車の進入動作が優先され、貴方の過失割合は20%されています。その他に著しい過失や重過失が認められれば、これから過失割合が修正されることになります。ただし、物損事故では正式な実況見分調書は作成されず、物件事故報告書という極簡単な書面しか作成されないため、ドライブレコーダーで事故時画像が確認できないと、両者間に認識のずれがある場合、事故態様の確定が難しい場合が多々あります。
労働問題
Q
私が働いている職場の社長から突然呼出しを受けて、「今日で解雇する、明日から来なくてよい。」と言われました。このようなことが許されるのでしょうか?
労働基準法20条には「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と書いてあります。そのため、使用者の中には、30日分の予告手当を支払えば、労働者を解雇してよいと誤解している人もいます。
労働基準法ができたのは戦後ですが、戦後大勢の労働者が解雇の無効を争い、沢山の判決が出され、解雇には正当な理由が必要ということになりました。
平成19年には労働契約法が作られ、裁判例で確立された解雇権濫用法理が立法化されました。労働契約法16条には「解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したのもとして、無効とする」と書かれています。
ですから、解雇をされた場合、これが有効であるか否かを判断するために、まずはその解雇の理由をきちんと書面でもらうことが必要です。その上で何をすべきかについては別の質問に譲ります。
Q
最近、残業が多いのですが、社長から「いくら残業をしても残業手当がつかない。採用時に伝えたでしょ?」と言われました。確かにそのような説明を受けた記憶はあるのですが、残業代は請求できないのでしょうか?
労働基準法上、法律が定める時間以上の労働をした場合(原則1日8時間、週40時間:労働基準法32条)、割増賃金を支払うこととなっています(同法37条)。
この点については罰則も存在し、単に契約当時に「いくら残業をしても残業手当がつかない。」という説明があったからといって、その一事で、残業手当を請求できないものではありません。
もっとも、より具体的には、職場から、①給与明細書上の基本賃金には残業代を含んでいると主張されたり、②基本給とは別に支給されている業務手当は残業手当に相当するものだ、などという主張をされることがあります。この基本給と残業手当の関係、各種手当と残業手当の関係についても様々な裁判例が出ており、労働者の残業手当の請求が認められたものも多々あります。
給与明細書を見て、きちんと残業代が支払われているのか等ご不明な点がありましたら、お気軽に当事務所の弁護士にご相談下さい。
Q
私の夫が働き過ぎによる影響で心臓に病気を抱えるようになりました。主治医の先生からは働き過ぎが原因だと言われております。今後の生活が不安なのですが、どうしたらよいのでしょうか?
仕事には多くの精神的・肉体的ストレスがかかります。
そのため、労働契約法5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。
しかし、使用者が、上記の必要な配慮を怠り、現実に働き過ぎが続き、また、職場でのパワハラ、セクハラ等の精神的・肉体的ストレスが原因で身体の不調(脳・心臓疾患)や精神の不調(うつ病等)を来す場合があります。
その場合には、まず労災申請をすることが考えられます。それらの疾病が業務上の災害と認められれば、治療費、休業補償や、後遺障害がある場合の補償を受けることができます。しかし、労災は、使用者や職場の責任があることを前提とする手続きではありませんので、労災からは慰謝料という給付を受けることができません。
よって、業務による疾病になった方は、使用者の法的責任を追及して、損害賠償の支払いを求めていくことが考えられます。
当事務所では、労災申請の代理人、会社に対する損害賠償請求の交渉や訴訟のご相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談下さい。
Q
納得できない解雇をされたので会社に対して何か請求をしたいのですが、どのような請求ができますか?
違法無効な解雇をされた場合、労働者は働く意思があるのに会社都合で出勤できず、賃金がもらえなくなります。
よって、使用者は、労働契約が有効に継続しているものとして違法無効な解雇をした以降も賃金を支払う義務を負います。もっとも、その賃金請求は解雇をされた労働者の方が働く意思を持っていることを前提とします。
働く意思を持っていない労働者に対して賃金を支払う義務はないからです。
よって、納得できない解雇をされた時には、まず解雇理由を書面でもらい(Q1参照)、すぐに解雇に納得していないため職場復帰と賃金の支払いを求める書面を送るのが良いと思います。
その上で、交渉、労働審判、仮処分、裁判などの中から最も適した手続きを選択することとなります。労働組合に加入して団体交渉を行うという方法もありますので、何が最適な解決方法かについてお気軽に当事務所にご相談下さい。
離婚・男女問題
Q
離婚をしたいのですが、どのような手続きを踏めばいいのですか?
離婚制度には、①協議離婚、②調停離婚(その後の審判離婚・但しとても少ない)、③裁判離婚があります。
まずは①夫婦で協議して、役所に離婚届を提出する協議離婚を試みる方が多いと思います。二人の合意により離婚が成立しますので、法律が定めている離婚原因がなくても離婚できます。
しかし、そもそも離婚の合意ができない、親権や養育費など離婚の条件が整わない場合は、家庭裁判所に②調停の申立てをします。調停前置主義といって、原則としていきなり裁判を起こすことはできません。
調停でも合意に至らなかった場合は、③裁判で離婚を求めていくしかありません。裁判で離婚が認められるためには、法律上の離婚原因が必要です。(次項参照)
Q
法律上の離婚原因を教えてください
民法770条1項に定めがあり、実務では不貞行為(1号)、悪意の遺棄(2号)、婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)などが争点となることが多いです。
婚姻を継続しがたい重大な事由については、単に性格の不一致などを一方的に主張しても、認められない可能性がありますので、具体的な証拠に基づく、具体的な事情を検討します。たとえば、暴力や暴言の場合、時期や頻度、その内容を詳しく聞き取りして、身体的・精神的苦痛を示す診断書がないかなどお尋ねしています。生活費を入れない、仕事をしないなどの経済的ネグレクトも婚姻を継続し難い重大な事由に該当するでしょう。
「モラハラ」なども話題になっていますが、婚姻生活の継続が困難であると評価できる具体的な事情は何かが重要です。過去の裁判例なども参考になりますので、詳しくはご相談下さい。
Q
長期間、別居をしていれば離婚できますか?
長期間の別居は、夫婦関係の実態が失われていたことを示す一つの事情ですので、その他の事情と総合考慮して、婚姻関係を継続しがたい重大な事由があると評価される可能性があります。
法律相談などでは「何年別居したら離婚できますか?」とういう質問を受けますが、○年たったら離婚できると明確に定めた法律も裁判例もありませんので別居期間が長ければ長いほど、離婚が認められる可能性が高くなるとお答えしています。
Q
浮気をした当事者(有責配偶者)からの離婚請求は認められますか?
有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則です。
例外的に認められることがありますが、厳しい条件をクリアすることが求められるでしょう。別居期間が同居期間と対比して相当長期及んでいること、未成熟子がいない場合で、離婚が著しく社会正義に反する特段の事情がないことなどです。
有責配偶者の一方的な都合による離婚で、相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況におかれることがないように、通常の離婚事件よりも高額の財産分与や慰謝料の支払いを求められることも想定されます。
Q
離婚するときは必ず慰謝料が発生しますか?相場はどのくらいですか?
離婚の原因を作った有責配偶者(浮気や暴力、ネグレクトなど)に対して、これによって精神的苦痛を被った方が請求できるのが慰謝料です。性格の不一致など、どちらが悪いと評価できない場合、慰謝料は発生しません。
慰謝料の相場は数十万円から数百万円、もっと高額の慰謝料が認められる事例もありますが、個々の事案ごとに検討が必要です。
Q
子の親権を争っている場合、どのような事情が考慮されますか?
父母の事情としては、①監護に対する意欲と能力、②本人の健康状態、③経済的・精神的家庭環境(資産・収入・職業等)、④居住・教育環境、⑤愛情の程度、⑥監護補助者の有無(実家の状況、親族・友人の援助の可能性)等などが考慮されます。
子どもの事情としては、①本人の希望、②年齢・性別、③兄弟姉妹との関係、④心身の発育状況、⑤現状への適応状況、⑥環境への変化の適応性等が考慮されます。
従前の監護状況等も考慮されることになりますし、子どもの立場にたって、子どもの利益を考えて行動しているか否か(離婚紛争に子どもを巻き込むような発言をしていないか、理由なく親子交流を拒否していないかなど)もポイントとなります。
Q
どのような財産が財産分与の対象になるのか、どのような割合で分けるのか、教えてください。
財産分与の対象については、婚姻中に夫婦双方の協力で形成された財産に限られ、婚姻前から有していた財産は含まれません。婚姻後に取得した財産でも、遺産を相続した場合などは、その当事者の特有財産とされ、財産分与の対象になりません。
分配割合は、基本的に2分の1とされています。専業主婦の場合でも、家事や育児を行うことで財産形成に寄与していることは明らかですので、この原則があてはまります。
また、貯金や生命保険などプラスの財産があるけれども、一方で借金などマイナスの財産の方が上回っているという夫婦の場合は、分けるべき財産がないので、財産分与はないという結論になります。この点「負債は2分の1ずつ負担すべきではありませんか?」との質問も受けますが、負債については、債権者とのかねあいでは、夫名義の借金であれば夫が支払う、妻名義の借金であれば妻が支払うことになります。もっとも、財産分与の一内容として事実上考慮されることもありますので、詳しくはご相談下さい。
Q
他県で暮らしていたのですが、子どもを連れて、北九州の実家に戻ってきました。子どもが幼く移動も大変です。福岡家庭裁判所小倉支部で調停を起こすことはできますか?
離婚調停の管轄は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所です。ですので、相談者さんの場合も、相手方が相談者様の最寄りの裁判所で調停を行うことに合意しない限り、相手方の住所地の裁判所で調停を行うことになります。
管轄がない裁判所に申し立てた場合でも、事件を処理するために特に必要があると認められるときは、申立てを受けた裁判所が処理できる場合もあります。もっとも、これが認められるのは、病気等の理由で遠方に出向けない等、例外的な場合に限定されており、子どもが小さい、遠方なので移動が大変等の理由では難しいと思います。
なお、最近は調停でも電話やWEB会議が利用できるようになりましたが、代理人弁護士がついてることを運用として求められることが多いですし、調停が成立するときは出席しなければいけません。詳しくはご相談ください。
遺産相続
Q
私が死亡した場合、誰が私の遺産を相続するのでしょうか?
あなたに配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者がいる場合、原則として、相続人となるのは、順に①配偶者とあなたの子、②配偶者とあなたの両親(両親が死亡している場合は祖父母)、③配偶者とあなたの兄弟姉妹です。
配偶者がいない場合は、順にあなたの①子、②両親、③兄弟姉妹が相続人となります。
当事者が亡くなった時期の先後により、相続人や相続分が異なる場合がありますので、詳しくはご相談ください。
Q
遺言を書いておけば、誰に相続させるかを決めておくことができますか?
あなたが遺言をすれば、遺言で、「相続人の誰に何を相続させるか」を決めておくことができます。遺言には、自分で作成する「自筆証書遺言」と公証人役場で作成する「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言の作成は手軽ですが、形式を間違うと無効になるおそれがありますので、事前にご相談いただくことをお勧めします。
なお、遺言を作成した場合であっても、遺言により遺留分を侵害された相続人には遺留分侵害額請求権が発生するおそれがあります(⇒Q6)。
Q
私の遺産を私が生きているうちに、同居する子どもに相続させたいのですが、できますか?
「相続」はあなたが亡くなった後にしかできません。生きているうちにできることは「生前贈与」です。この場合、贈与する内容によっては、お子さんに贈与税が生じるおそれがありますので、あらかじめ専門家に相談することをお勧めします。
Q
私と関係性の悪い子どもに私の遺産を相続させたくありません。何か方法はありますか。
原則として、あなたのお子さんはあなたの相続人になりますが(A1参照)、例外的に、その子に民法が定める「欠格事由」がある場合や、あなたが裁判所にお子さんの「廃除」を請求し、裁判所が認めた場合には、お子さんを相続人から外すことができます。あなたの事情がこうした例外に当たるかどうかは、具体的にご相談ください。
Q
父が亡くなりましたが、多額の借金があり、父が遺した預金等の財産を上回ります。どうすればいいですか?
相続放棄の手続をお勧めします。相続放棄は、相続開始(通常は被相続人の死亡)を知ったときから3か月以内に行う必要がありますが、場合によっては被相続人に借金があることを知ったときから3か月以内であれば行うことができます。期限を過ぎると、相続放棄をすることはできなくなりますので、お早めにご相談ください。
Q
私は3人姉妹の二女です。父は既に亡くなっています。先日、母が「長女にすべての遺産を相続させる」という遺言を遺して亡くなりました。私と妹は何も相続することはできないのでしょうか。
あなたと妹さんには、遺留分侵害額請求権が発生しますので、この権利を行使すると、遺産から法定相続分の2分の1(本件では、それぞれ6分の1)に相当する金額を受け取ることができる可能性があります。遺留分侵害額請求権は、あなたが遺留分を侵害されたことを知ってから1年以内に行使しなければなりませんので、行使の方法や、請求額の見通しについて、弁護士までお早めにご相談ください。
Q
父が亡くなり、このたび母も亡くなりました。私はきょうだいの代表として、両親の法事を行い、祖先のお墓も守っています。私のこの労力を考慮して、相続分を多くしてもらうことはできませんか?
祖先の祭祀(法事等)の主宰や、お墓、位牌等祭祀のために必要な祭祀財産の引継は「祭祀承継」と言い、遺産分割(いわゆる財産分け)とは別の取扱になります。このため、あなたが祭祀承継者であったとしても、法律上は、財産を多く相続することはできません。
もっとも、相続人であるきょうだい間の遺産分割協議においては、法定相続分にこだわらず、具体的な遺産の分け方を決めることができますので、きょうだいにあなたの祭祀に関する貢献について説明し、理解を求めることをお勧めします。
Q
母が亡くなり、父も亡くなりました。父に遺言はなく、相続人である私達子ども達で遺産の分け方について話し合いましたが、話し合いがまとまりません。どうすればよいですか?
家庭裁判所に、相続人全員を当事者(申立人または相手方)とする遺産分割調停を申し立てることができます。調停は、家庭裁判所で調停委員に立ち会ってもらい、話し合いをする手続です。調停によっても話し合いがまとまらない場合には、調停手続を審判手続に移行させ、審判官(裁判官)に審判という形で結論を出してもらうことができます。
Q
遺産分割調停を申し立てる場合、弁護士を依頼した方がいいですか?
調停は話し合いの手続ですので、弁護士に依頼せず、ご自身で申立をすることができます。この場合、弁護士は、法律相談により、あなたに、申立の仕方や調停の進め方のアドバイスをすることができます。
弁護士に依頼した場合には、弁護士費用の負担が発生しますが、弁護士が調停手続一切を代理し、申立書の作成、必要書類の取り寄せを行うほか、調停期日や審判期日にあなたと一緒に出席して、あなたが家庭裁判所に言い分を伝えるお手伝いをすることができます。
迷った際には、まずご相談ください。
Q
遺産分割調停を弁護士に依頼した場合、弁護士費用はどのように算出されるのでしょうか?
当事務所において遺産分割調停のご依頼を受けるときには、原則として、着手金、手数料、実費、成功報酬が発生します。
着手金は弁護士が業務を行うことについて発生する費用で、原則として着手時(委任時)に発生します。金額は、遺産の総額、事案の難易度を参考にして決めます。
手数料は、申立に必要な戸籍謄本等の取り寄せを行った際に発生する費用です。
実費は、申立印紙代、郵便切手代、交通費等、事件を進める上で発生した費用実額です。
成功報酬は、遺産分割が調停または審判により解決した場合に発生するもので、事件終了後にあなたが取得できた遺産の価値(経済的利益)を算出し、その中から一定割合をお支払いただくものです。
当法律事務所では、着手金や成功報酬の基準を定めていますので、ご相談いただけると、事案の内容に応じて、弁護士費用の額や計算根拠を、具体的にご説明します。
犯罪・刑事事件
Q
私の子どもがアルバイト先の建設会社の作業現場で他の作業員とケンカになり、相手を殴って全治14日間の怪我を負わせ逮捕されてしまいました。この先どうなるのでしょうか。
原則として逮捕後48時間身柄を警察署に拘束されます。
本人と相手方との供述が食い違う場合などには、逮捕に引き続いて勾留請求され、更に10日間身柄を拘束されます。勾留は一度だけ延長も認められており、逮捕・勾留請求の期間も含めると最大23日間身柄を拘束される可能性があります。
Q
私の子どもが未成年の場合はどうなるのでしょうか。
逮捕・勾留の手続は成年の場合と同様です。
勾留期間満了時に、成年の場合は、検察官が起訴・不起訴を決めますが、未成年の場合は、全件家庭裁判所に送致され家庭裁判所が観護措置の要否を判断します。観護措置が必要と判断された未成年者は少年鑑別所に身柄を送致されます。
Q
弁護人を付けるにはどうしたらいいですか。
弁護人には私選弁護人と国選弁護人があります。
知り合いに弁護士がいる場合には、私選弁護人の依頼をしてみて下さい。事案によりますが、弁護費用は20~30万円が目安でしょう。
弁護士の知り合いがいない場合や弁護費用の用意が出来ない場合には、弁護士会に当番弁護士の出動(無料)を依頼し、その後被疑者国選弁護制度を利用するのがいいでしょう。
当番弁護士の出動を依頼するには、北九州の場合093-583-3800に電話して下さい。
Q
被害者との示談はどうしたらいいですか。
被害者の住所・氏名がわかっていれば、直接被害者に連絡して、謝罪のうえ、示談の申出をすることができます。
被害者の住所・氏名がわからないときや被害者が加害者の関係者との接触を嫌がっているような場合には、弁護人を通じて被害者の住所・氏名を確認のうえ、示談交渉をすることになります。
設問の傷害事件のような場合には、早期の示談が特に大事になります。
Q
起訴・不起訴は誰が決めるのですか。
検察官が決めます。
検察官は、事案の軽重・被害感情・本人の反省など、諸般の事情を総合考慮して起訴・不起訴の処分を決めます。
傷害事件の場合には、通常の起訴以外に罰金を求刑する略式起訴もあります。
弁護人は、検察官と交渉して起訴猶予か略式起訴になるように弁護活動を進めることになります。
Q
保釈について教えて下さい。
通常の起訴(公判請求)がなされた後は保釈請求ができます。
保釈請求をする場合には、被告人の逃亡防止・罪証隠滅の防止のため身柄引受人を確保するのと、逃亡防止のための保釈金を用意する必要があります。保釈金は事案によって異なりますが、100~200万円が目安でしょう。保釈金が高額のため自分で用意できない場合には、保釈金を借りることができる制度がありますので、弁護人に相談してみましょう。
Q
公判ではどのような審理がされるのでしょうか。
被告人が犯行を認めている事案では、通常第1回公判期日に情状証人の証言と被告人質問が実施され、検察官の求刑、弁護人の弁論まで済ませて結審となり、第2回公判で判決が下されます。
被告人が犯行を認めない否認事件の場合には、関係者の証人尋問を続けるなど審理を尽くしたうえで、有罪・無罪の判断が下されることになります。
Q
控訴について教えて下さい。
一審判決に不服がある場合には控訴ができます。
控訴期間は判決日の翌日から14日以内です。控訴は検察官も被告人もすることができますが、被告人のみが控訴している場合には、控訴審は一審より重い判決を下すことはできません(不利益変更の禁止)。しかし、控訴審の第1回期日が開かれるまでに半年くらいかかるため、むやみに控訴するのは不利益が生じます。
Q
再審について教えて下さい。
刑事裁判で有罪となり、服役した後に再審請求をして無罪となった事件が最近でも布川事件、氷見事件と相次ぎました。これらは、捜査段階で捜査官が被告人を誘導してウソの供述をさせ、公判段階で被告人が否認に転じても、もはや信じてもらえずに有罪判決が確定してしまったのです。検察官は被告人に有利な証拠を隠したままで判決を獲得したのです。
このような再審事件から学ぶべきは、取調べの可視化と証拠の全面開示です。そして「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の大原則が守られているかの検証を常になされるべきものです。
Q
裁判員の呼出状が送られてきました。出頭しなければならないのでしょうか。
裁判員の呼出に対する出頭は国民の義務です。
病気等の特別な事情がある場合は例外的に出頭義務が免除されますが、原則出頭義務は免れません。平成21年から導入された裁判員裁判は、直接主義・口頭主義の刑事訴訟法の原則に立ち返り、国民が直接裁判官と議論をして事実を認定し判断を下すというもので、従前の裁判とは大きく異なるものです。裁判所の中に民主主義を根付かせるためにも積極的に参加しましょう。
成年後見
Q
父親が認知症の診断を受け、銀行から「本人の意思確認ができないので預貯金の引き出しには応じられない」と言われました。施設利用料などの支払いができず困っています。どうすればいいでしょうか。
認知症や障がいなどでご自分の財産を管理する能力が損なわれ、回復の見込がない方の財産管理を行うためには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。お父様がお住まいの地域を管轄する家庭裁判所に成年後見開始の申立を行うことを検討してみてください。
Q
父親の成年後見開始の申立を行うことを考えています。誰が申立を行えば良いのでしょうか。
成年後見開始申立を行うことができるのは、ご本人の4親等内のご親族、市町村長、検察官です。4親等内の親族とは、通常、ご本人の配偶者、親、子、祖父母、孫、おじ・おば、甥・姪、いとこ等です。また、後見申立を行う方が居ないときには、市町村長申立ができる場合がありますので、お近くの行政の高齢者・障がい者相談窓口にご相談ください。
Q
父親の成年後見人に私が就任したいと考えていますが、可能でしょうか。
成年後見開始の申立の際、後見人候補者として申立人やご本人の親族等を推薦することができますが、誰を成年後見人に選任するかを決めるのは家庭裁判所が調査を行った上で決定しますので、必ずしも申立人の意向が反映されるとは限りません。一般的に、親族間で紛争が生じている場合や、遺産分割や保険金請求、不動産の処分等大きな財産の管理や法的処理が必要な場合には、専門職後見人(弁護士、司法書士等)が選任されることが多いようです。
Q
成年後見人はどのような事務を行う必要があるのでしょうか。
成年後見人が行わなければならない事務は、財産管理と身上監護です。
成年後見人に就任後はご本人の財産や収支状況を調査し、家庭裁判所に報告する必要があります。財産状況を把握した後は、後見人とご本人との財産を厳格に分けて、ご本人の利益を損なうことがないよう十分に注意し、財産管理を行う必要があります。また、定期的に裁判所に対して財産や収支状況の報告を行う義務がありますので、支出を行った際には必ず領収証等の資料を取得・保管してください。
身上監護は、ご本人が適切な環境(自宅、病院、施設等)で生活できるよう、環境を整えることを言います。
Q
専門職後見人が選任された場合、報酬はどのくらいになりますか。
専門職後見人に対する報酬の金額は、裁判所が後見人が行った事務の内容、ご本人の財産状況等を考慮して決定します。一般的に、報酬額は月額2万円~6万円程度とされていますが、事務内容によっては更に増額されることもあります。報酬は、ご本人の財産から後見人に支払われます。
Q
成年後見はいつ終了しますか。
ご本人の死亡や能力回復により終了します。
なお、成年後見人がやむを得ず辞任したり、死亡したりした場合には、ご本人の成年後見は終了せず、新たな成年後見人が選任されることとなります。