● 13年04月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №42 永万寺 裁判3
裁判長の忌避
一審判決が何故最高裁判決の解釈を間違えたのか判らないが、私達は丁寧に最高裁判決をどう読むべきかを高等裁判所で説得した。
裁判も終わりに近づいた。高等裁判所の石塚裁判長は私達に「時効の主張より何か主張はないのでしょうか」と言いだした。
私達は考えた。永万寺には寺内得度という制度があった。永万寺では法中と認められたときには得度式を行い、その直後の御恩請で高座に座って門徒にも披露していた。このことだと思った。そこで、その主張をすると裁判長は「寺内得度では宗教上の教義になる。他にないのか」と言いだした。
私達は「それでは何なのか」と頭が真っ白になったが、法中が永万寺の僧侶になったときに住職がそれぞれの担当地域を決めて、そこから得る御布施を受け取っていいという黙示の契約をしたのだと主張し直した。
石塚裁判長がうなずいた。すると、相手の弁護士が怒り出した。「私は長い間弁護士をしてきて、忌避などしたことがないが、あまりに不公正な訴訟指揮である」
石塚裁判長「忌避をなさるのであればどうぞ」
裁判の当事者は、裁判官が裁判の公正を妨げるべき事情があるときは忌避の申立をして、この裁判官を裁判から排除することが出来る。
しかし、これを安易に認めていたのでは裁判が進まなくなる。そのためにこれまで忌避が認められたことは歴史上一度もない。結局相手方は忌避をあきらめた。
判決
私達は勝利を確信していた。平成十四年十月二十五日の福岡高裁の判決は、「法中の法務活動を長年認めてきたので黙示の契約があり、本件の争いは御布施など金銭を受け取ることが出来る地位に関する争いとして裁判できる」と判決し、私達は勝利した。
しかし永万寺は法中を解任しており、「この解任が正当かどうかを審理する必要がある」ので、福岡高等裁判所は、原審である福岡地方裁判所小倉支部に差し戻した。