● 13年07月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №51 嘉穂劇場の 舞台に立つ ③
筑豊じん肺訴訟の一審は終結を迎えていた。
私達は飯塚市の嘉穂劇場で〝続・俺達はボタじゃない″を上演した。2年前にも私達は千人の観客を集めて〝俺達はボタじゃない″を上演し、今回はその続編である。
最初のシナリオは松本洋一筑豊じん肺訴訟弁護団長が書いた。あれから2年、筑豊じん肺訴訟は結審をする。じん肺の悲惨さを広く世論に訴えて、裁判を勝利するために再び嘉穂劇場で芝居をやろうということになった。
筑豊じん肺訴訟は提訴以来八年を経過している。その間に原告患者のうち68人が裁判の途中で死亡した。一日も早く解決しなければならない。そのためには法廷で被告石炭企業の責任を明らかにしなければならないことはもちろんだが、世論を盛り上げて被告企業や国が和解のテーブルにつくようにしなければならない。
嘉穂劇場で弁護士が芝居をすれば観客も集まるし、マスコミもとり上げてくれるので、結審前にもう一度、千人集めた集会をしようということになった。
松本洋一筑豊じん肺訴訟原告弁護団長は優れた弁護団長だった。原告と弁護団の松本弁護士に対する信頼は厚く、松本弁護士は弁護団会議も法廷も取り仕切っていた。被告弁護士や裁判所を適切な発言で追及し、裁判をリードしていた。
また「俺たちはボタじゃない」のシナリオも書いた。
その松本氏が死んだ。筑豊じん肺弁護団では私以外にシナリオが書ける人間がいない。そこで私は前回の〝俺達はボタじゃない″の続編を書くことにした。前回の芝居は炭坑夫がじん肺にかかり、裁判を起すところで終っていた。
私は今回の芝居では裁判がどのように展開したのか。どうして被告石炭企業や国に責任があるのかを明らかにしようとした。そして前回の芝居と関係づけるために今回は、前回の芝居のうちで鉱長役の私が、炭坑夫を坑口に集めて演説をする場だけをとりあげた。