● 13年07月11日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №52 嘉穂劇場の 舞台に立つ ④
私の役は悪役で、強制連行で朝鮮からつれて来られた男が、石炭の粉を吸うと体に悪いといったのを捕えて、アメリカのスパイだとののしり、憲兵隊に引渡するという役だ。
私がシナリオを書き上げ、ひまわり一座といって芝居好きの弁護士達を集めると、「どうしてあんただけが出番があって、俺は端役なのか」「こんなつまらん役なら俺は出ない。俺の出る場所をふやせ」と言い出した。
このひまわり一座の協力がなければ芝居はできない。やむなくひまわり一座の弁護士が活躍できるようにシナリオを書き替えた。
私のシナリオは裁判劇だが裁判劇はあまり面白くない。そこで私=鉱長が裁判に証人として出廷させられ、原告弁護士から「朝鮮人金村を憲兵隊に引渡したろう」と追求され、「そんな事はしていない」と偽証を続けているところに金村が「俺は生きていたぞ」と登場させることにした。
ところがこの金村役の八尋弁護士は「俺はせっかくアリランを歌ってきれいに死んだのに生き返るのはいやだ」といい出した。そこでまたシナリオを書き替えざるを得ない。
芝居の当日は我が事務所の弁護士も事務員さんも、お客さんも見に来てくれ、前回以上の1200人を集めて大成功だった。
芝居を見てくれた人は私に「弁護士にはもったいない。役者になったら」とおほめの言葉をいただいたが、私が苦労したのは役者としての私ではなく、シナリオ作家としての私、演出家としての私、総監督としての私、そして観客を集めなければならない組織者としての私でした。
私は、芝居が終ってやっと安らかに夜が眠れるようになった。