● 15年07月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №123 第二章 闘う弁護士 先物取引(一)
豊田商事事件があれだけ騒がれたにもかかわらず、先物取引の被害者は依然としてなくならない。
政府は抜本的規制をとろうとせず、警察は詐欺師を野放しにしている。預貯金の目減りとマル優廃止を心配している多くの善良な市民に甘い言葉で近づいて、大金をだまし取る先物取引の恐ろしさは、まだ社会に知られていない。「欲に目がくらんだから。だまされた方も悪い」という皮相な考え方は相変わらず根強い。
豊田商事事件の被害者がそうであったように、先物取引の被害者は無職者が飛び抜けて多い。50歳代、60歳代に特に多い。これは退職金を手にしたばかりの人が狙われているところからきている。とりわけ、国鉄や教員、公務員の退職者が狙われているところからきている。退職金を手にして、もう二度とないこの大金を、目減りしない方法がないものかと心配している心の隙が、うまくつかれてしまうのである。私の事務所にも商品先物取引の被害者が何人も相談に来られた。
先物取引の商品も、砂糖、小豆、コーヒー、石油、ゴム、金などは私も知っているが、白銀、パラジュウム、S&P500となると、商品自体見たことも聞いたこともない。取引市場も関門や神戸など国内から香港、ロンドン、シカゴ、ニューヨークと広がっていく。
これから先物取引はほとんどみな詐欺である。しかしながら、これらの詐欺会社を相手にして「詐欺師」と怒鳴っただけでは問題は解決しない。その詐欺師の手口を暴露し追求することによって初めて、相手も交渉に乗って来る。従って先物取引の被害を回復するためにはまず、先物取引の仕組みと、その仕組みを利用した詐欺の手口を、弁護士が勉強しなければならない。
海外先物取引では、私は「ちゃんと取引きしたいという証拠を出せ」と追求する。会社は海外取引市場の全員に対するテレックスを、証拠として私に提出する。
「これはあなたの会社が注文したというだけで、ロンドン取引所でコーヒーを買ったという証拠にはならない。私が要求しているのはお客さんが注文したコーヒーがロンドン取引所で本当に買われたかどうかです」
私の要求した証拠を、提出できる会社はなかった。そこで相手は私の要求する金を払わざるを得なかった。