● 15年09月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №129 第二章 闘う弁護士 霊感商法(一)
「貴社は慶寿印三本三本12万円、高麗大理石壺李朝朝
丸型1個90万円、一和人参濃縮液21個167万円を販売したが、貴社の右品物には価値はなく、またその効果もないので詐欺であるから右契約は取り消します。よって本通告が貴社に到着した日から、5日以内に私まで、右代金合計269万円を返済してください」
三日後に小倉天勝堂から清水と名乗る男がやってきた。
「先生、分割払いでお願いできないでしょうか。来月から毎月30万円づつ返します」「分割でもいいけど、とにかくまず100万円持ってきてください。残りは分割にしよう」
「100万円はとうてい無理なので、60万円持ってきます。残りは分割でお願いします」
「まあ、仕方がない」
と示談が成立したのは12月29日だった。
これがその年最後の仕事なり、めでたく年を越し1月1日、近くの高見神社に、こんちゃんとお参りに行く。
すると男が一人で「恵まれない子に愛の手を」と書いた募金箱を持って募金を訴えていた。
「いやだなあ」と男の顔を見ると、なんとこれがあの小倉天勝堂の清水ではないか。私に返す金を正月から集めていたのだ。
「こんちゃん、あいつはこの前話した小倉天勝堂の清水だ」
「えっ、こんな所でお金集めよるとね。このまま黙って帰る気」
「こんな所でケンカしても仕方がない。武士の情けじゃ、見逃そう」
「何が武士の情けね。ドン百姓のくせして。このまま帰れば、あんたも詐欺の共犯やないね」
「それは論理の飛躍だ。僕は行動を肯定しているわけではない。詐欺の現場を見て、止めなくても犯罪は成立しない。僕は弁護士である。弁護士には依頼者の利益を守る法的義務がある。あの募金箱の金は依頼者の金となる。募金の妨害は依頼者の利益に反する」
「屁理屈ばかり言うて、この卑怯者」
と私を罵るとこんちゃんは一人で清水に向って行った。