● 15年10月21日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №132 第二章 闘う弁護士 霊感商法(四)



img-X21100824-0001東大生は私に答えた。

「それはあなたの考え方が誤っていたから変わったのです。私はあなたと違って、やらなければならないことがあるのです」

「それは何ですか」

「あなたにそれを言っても理解しないでしょう」

「それはそうかも知れない。私も統一協会については本を読んだだけでよくは知らない。私は無神論者だが、宗教は否定しない。キリスト教、仏教などこの世には様々な宗教があり、それぞれ絶対の神を信じている。各々が宗教で終れば個人に迷惑をかけることもないが、狂信的な宗教は人を不幸にする。統一教会もあなたの両親がそうであるように、多くの親たちを苦しめている」

「両親はいずれ分かってくれます」

「分かってくれるかも知れないが、一生分からないかも知れない。少なくとも今、あなたは両親を苦しめている。あなたはやっと大学に入ったばかりだ。人間の思想にはいろんなものがある。大学生はその先人達の思想をまず勉強すべきだ。いろいろ勉強した上で選択するならいいが早過ぎる。卒業して一定の社会経験をしてから選択してもいいではないか」

「半年後に重大なことが起こります。それにそなえて対応しなければならないのです」

「それは人間の判断を誤らせるための統一教会のやり口だ。時間を切れば冷静な判断ができない。それじゃあ、その半年後の事件とは何ですか」

「言えません」

「あなたも法学生なら目的と手段の相当性を知っているでしょう。目的が正しくとも霊感商法は詐欺です。詐欺という犯罪をするような人達が人間を幸福にするとは思えない」

「壺には、文鮮明の心が入っているから価値があるのです」

「あのね、あなた達がこの壺は原価6千円だけど、文鮮明の心がこもっているから220万円ですと言って売ったなら詐欺にはならない。しかしあなた達は原価を隠して売っているでしょう。だから詐欺です」

人の思想を変えることは難しい。夜中の二時になり、私は無能を悟って引き上げた。しかし父親は「先生、有難うございます」と私の手をしっかりと握ってくれた。


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