● 15年10月31日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №133 第二章 闘う弁護士 霊感商法(五)
帰宅するとこんちゃんが「電話、電話」とあわてている。
「どうしたの?」と尋ねると、
「もう三回もへんな電話がかかってきよる。ほら、また電話、あなた出てよ」
私が電話に出る。
「もしもし、安部ですが」
「あんたは人殺しや」
「私はまだ人を殺したことはありませんが」
「あんたのやっていることは人殺しと同じや」
「何のことをおっしゃっているんでしょうか、意味がわかりませんが。あなたはどなたですか」
「ワシは警察庁の者や」
「警察庁のどなたでしょうか」
「殺してやる」
「お前、いいかげんにせえよ。名前を言え。名前を」
ガチャンと電話が切れた。
「なんだ、こいつは」とこんちゃんに尋ねる。
「聞きたいのはこっちよ。あなた何か心当たりある?」
「私はこれでも敵とはきれいに闘うから、これまで敵から恨みを買ったことはない。警察庁?そう言えば今やっとる事件では折尾署のスパイ強要事件で高尾という警備部長を二年程いじめとる。しかし、警察がこんな電話をしてくるかな」
「もうこれで四回目よ。『安部千春は人殺しや、人殺しせんようによう言うとけ』と同じことをしつこく繰り返すのよ」
しばらく考えてようやく私は犯人がわかった。
「こりゃ、小倉タイムスや。今、僕が小倉タイムスに勝共連合の悪口を書きよるやろうが。それで勝共が脅しの電話をしてきたんや。しかし、小倉タイムスはすごいな、読者に勝共までおるとは」
「あんたが調子にのってあんなものを書くからよ。殺されたらどうするんね」
「バカ!僕のような名もない弁護士を殺してどうするんね。脅し、脅し」
「あのね、殺された朝日新聞の記者だって無名やないね。今、勝共の敵は弁護士会よ。弁護士を狙っているかもしれんよ」
翌朝 事務所に出勤すると、エレベーターの前の大鏡が、鏡の前に置いてあった観葉植物の大鉢で破られ、床にガラスと土が散乱していた。三回の事務所の入り口ドアの換気口の格子が蹴り破られていた。
私はこれで私の命は助かったと、思わずニヤリと笑った。