● 15年12月21日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №138 第二章 闘う弁護士 オリエント貿易(三)



img-Z21100309_ページ_1次の証人は本店の藤春良一である。

「昭和59年2月14日、21枚を買い建てしたのはなぜか」

「値が上がるだろうという予測をしたからです」

「2月15日に一日で売り落ししたのはなぜか」

「思惑通りに値が上がってきたので利食いを狙ったものです」

「ところが2月15日にまた21枚買い建でしたのはなぜか」

「これは6月限りを買い建てしました。結局7月限りを六月限りに買い替えたものです」

「なぜそんなことをしたのか」

「6月限りの方が上がると思ったからです」

「買い替えれば、あなたの会社は29万4,000円の手数料が入り、私の依頼者はその分損をする。手数料以上に儲ると考える根拠はなにか」

「それは相場ですから分かりません」
「ところで2月15日に買い建でしたのは値が上がるだろうと予測したからですね」

「はい。その根拠はこの日の為替が一週間前に較べると1円20銭安になっているし、前日の終値と比較しても1円安になっていますし、ユニコミ通信が中国の買いが始まるといった情報もあって、値上がりするだろうという判断になったと思います」

「ところが実際は値下がりしましたね。なぜですか」

「当時の資料をひもといて見ないと分かりませんが、為替が円高になったからです」

「あなたの判断は誤ったわけですか」

「2月15日ではこれでよかったと思いますが、その後の判断がちょっと当たることができなかったということは事実だと思います」

「誤っていたわけでしょう」

「誤ったという表現じゃなくて甘かったというのは事実だと思います」

「なぜ甘かったのか、その理由を述べて下さい」

「その理由というのは別にないと思います」

「あなたの注文の仕方を分析すると、為替が円安になるとゴムが上がると考えて買い建てする。為替が円高になると売り建てている。要するに、為替の後追いで注文しているだけだ。しかし為替が円高になるのか、円安になるのかは予測がつかないでしょう。だから予測が当たらないのは当然ではないか」

「・・・・・」

店長藤春は黙して語らず、私の勝利は確定的なものとなった。


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