● 16年01月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №139 第二章 闘う弁護士 オリエント貿易(四)
オリエント貿易で先物取引をして損をしたという、別の被害者が相談に来られた。直ちに内容証明郵便で、損をした金を返せと要求すると、オリエント貿易の担当者が飛んでで来た。
「先生、示談にしましょう」
「示談はいいけど、いくら返してくれますか」
「この件は裁判になっている件ほど悪質ではないから100万円くらいでどうでしょうか」
「へー、今度は気前よく100万円も返してくれるの」
「はい、ですから裁判している件も片付けましょうよ」
「いくら出すの」
「半分でどうでしょうか」
「ダメ、裁判をする前なら半分で負けてやるが、そっちが私を無視して始めた裁判だから、今さら示談なんかはせん」
「そうですか。前は担当者が悪かったので裁判になってしまいました。今後は問題が起きたらすぐ私に連絡ください」
まあ、調子のいい担当者である。
さて例の裁判は裁判所が仲に入って示談の話になった。私は示談するのがいやなので、依頼者を事前に呼んで話をする。
「相手は金を出すというでしょう。それは私が今日まで裁判で相手をやっつけたからです。こんな悪い会社はやっつけなければなりませんので示談にしてはダメですよ」
示談が始まると裁判所は私を説得する。
「安部先生の気持ちはわかりますが、この事件の解決をまずはかりましょう。七割、相手方から返させますがどうですか」
「私たち弁護士が、こんな個別の解決をしているから、被害者が増えていく。豊田商事だってそうです。私たちが金を取り返したり、八割で解決したりしていたから、あんなに被害者が拡大した。こんな詐欺の会社はつぶさなければなりません。和解はいやです。明快な判決を下してください」
私が無理だとわかると裁判官は依頼者を説得した。
「七割出すと相手は言っているがどうですか。判決が出ても控訴されると長くなりますので、ここらが解決する頃合と思いますが」
「私も疲れました。安部先生の気持ちはわかりますが、私は示談したいのです」
ここまで言われては示談しないわけにはいかない。七割で示談した。直ちに記者会見をして新聞に載せた。