● 16年09月01日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №162 第三章 ひょうきん弁護士 宴会
権力犯罪の責任を追及している人達の交流集会に参加した。参加者はお互いに全く初対面なのでこの種の宴会で必ずあるのが自己紹介だ。弁護士とはヤクザと同じで男を売る商売である。初対面の人に自分を売り込んで、いつか事件の一つも紹介を受けるために、僕は今日もガンバルのだ。
自己紹介が始まるとどうしたら目立つかと考える。考えているとゆっくり酒も飲めない。その内バカバカしくなって飲み続ける。大分飲んだころに順番が回ってくる。すると考えたことは全部忘れている。こんな時には、
「それでは自己紹介代わりに歌を」
と17年間同じ歌を歌っている。
さてヘタな司会が今夜も始まった。
「今日は時間がありませんので、一人ひとりの紹介は省略して、各原告、弁護団、支援者をまとめてお願いします」
(バカ!まだ7時じゃないか。これじゃ間がもたんぞ)
僕の予想したとおり、この自己紹介はあっと言う間に終わってしまった。
バカな司会者が、「時間があるようですから、どなたかよろしくお願いします」などと言い出した。
(だから言ったじゃないか。俺は知らんぞ)と決意したが、座がシラーとしている。
(こんなときには俺しかいない)酒を3杯続けざまに飲むと私は飛び出した。
「あの、座がシラーとしているようなので、僕のワンマンショーを始めます。当たるときと当たらないときがあります。当たらなかったときは、なんであんなバカなことをしたかと自己嫌悪に陥りますが、根がひょうきんなので、今日こそは当たると期待して、同じ過ちを繰り返します。それではお待たせしました。安部千春のワンマンショーです」
と漫談を始めたが、予想どおりというか、酒が足りなかったのか、全然受けなくて、ますます座がシラーとしてきた。
困って立ち往生していると誰かが「歌」と、助け船を出した。(あ、そうだ。僕にはまだ歌があった)と17年間歌い続けた同じ歌を歌う。
歌う方は何百回同じ歌を歌っても、聞く方は始めてだ。何とか拍手がわき起こり、恰好がついた。
私が歌い終ると、何人かが後に続いてようやく宴会が盛り上がってきた。するとまたあのバカな司会者が出てきて、
「そろそろ時間も何ですから、宴会もこの辺で終ります」
私は直ちに立ち上がると司会者のマイクを取り上げて叫んだ。
「僕はまだ飲み足りない。飲み足りない人間は二次会に行くぞ。我々はいつまでも楽しく酒を飲み続けるぞ」
翌朝、二日酔いの頭でまたバカなことをしてしまったと後悔する。