● 16年08月21日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №161 第三章 ひょうきん弁護士 谷市長は間違っている
小倉タイムスによって部落解放同盟や同和会幹部による土地転がしが暴露され、北九州市民の同和問題に対する関心が強まった。「本を出すなら今だ」と私は執筆を始めた。
「こんちゃん、僕はこれから本を書くので電話はとりつがんで」
「何の本を書くの」
「そりゃ、決まっとる。この偉大なる安部千春弁護士の輝かしい勝利の記録をドキュメント風に書くのだ」
「へー。それで題は何というの」
「うん、『谷市長は間違っている』。副題は『同和裁判十七連勝の記録』というのだ」
執筆を始めて30分。
「あら、あなた、どうしたの」
「僕は頭がいい。30分考えて、僕には文才がないことが分かったので、もうやめた」
「バカねえ。せっかく思い立つだのだから書いたら」
「それはそうだが、才能がないから書けない」
「書けないのなら、またノリとハサミで判決文を切り抜いて、つなぎ合わせれば一冊の本ぐらいできるやないね。あなたが北九州市にこれだけ勝つなんてことは、もう二度とないでしょうから、一生の記念よ」
「それはいいけど、そんな本は面白くないから売れんよ。2000冊出せば200万円、そんな金は僕にはない」
「金はあるわよ。父の遺産が入ったから、それ使ったら」
「だって君の親父は貧乏なはずだが」
「私の父は私が八ヶ月の時に出て行ったので顔も知らない。ところが父の妹夫婦に子供がなくて、この夫婦が死んで父にその遺産が入ったの。父はその一ヶ月後に死んだので叔母の遺産がそっくり私に入ったの」
本の印刷を機関紙印刷に頼む。
「『著者安部千春』にしてくれ」
「先生、それはあんまりじゃないですか。先生は何も書いとらん。編集しただけじゃないですか」
「そんなことはない。ちゃんと『はじめに』というところを書いとる。僕が金を出すんだからつべこべ言わんで印刷してくれ」
「こっちにだって本を出版する業者としてのモラルがあります」
「よし、分かった。それなら両方の顔を立てて『編集者安陪千春』としよう」
かくして『谷市長は間違っている』は出版された。これを読んだ北九州市の顧問弁護士は言う。
「安部さんの本は確かに原告の主張の部分は安部さんが書いたかも知れんが、被告の主張は私か書いて判決理由のところは裁判所が書いている。著作権の侵害だ」