● 16年11月11日 ひょうきん弁護士
ひょうきん弁護士2 №169 第三章 ひょうきん弁護士 告訴さる (4)
その日のうちに警察官2人が私の自宅確認にやって来た。
私の家は路地の突き当りで、買物からちょうど帰って来たこんちゃんが見付けた。
「あんたたち、何しよるとね」
「窃盗犯人がこのあたりに逃げ込んだので、探しています。怪しい人物を見ませんでしたか」
「怪しいのはあんたたちやないね。警察手帳を見せなさい」
「どうも失礼しました」
「失礼しましたじゃないわよ。警察手帳を見せなさい」
こんちゃんの追及に二人はなりふり構わず、脱兎のごとく逃げだした。帰宅してこんちゃんから報告を受ける。直ちに国民救援会の森原春一さんに相談する。
今日一日の経過を説明すると、しばらく黙った後、森原さんは断言した。
「先生、明日逮捕ですな」
「逮捕って、僕がですか? だって私は何も告訴されるようなことはしていませんよ」
「先生、罪を犯した人だけが逮捕されるわけじやありませんよ。何人も無実の人が逮捕されています」
「それはそうですが」
明朝逮捕と宣告された私は、ゆっくり風呂に入り、丁寧に体を洗う。しばらく風呂に入れないかと思うと、なんだか涙が出そうになってくる。
新しいパンツをはくと早めに床に入った。床に入ってもなかなか眠れない。
「本当に僕は逮捕されるのかな。告訴されるようなことは何もしとらんのに。しかし、相手がどう言うか分からんし警察は解放同盟とぐるだし、逮捕状は出るかも知れん。前に解放同盟が市庁舎で糾弾会をしたとき、倒れた人の診察記録を北署に持って行って救出を要請したら、糾弾会は問題にせず、診察記録を持ち出したことが窃盗だと警察が騒いだことがあったな。まさかとは思うが、確かに無実の罪に対する逮捕状を裁判所は何度も出しているし……」
とうとう眠れないまま朝を迎えた。逮捕状の執行は普通、朝である。午前6時、突然玄関の戸がカタカタと鳴った。
「あっ、警察が来た」
と思い、瞬間私の心臓の鼓動は激しくなった。
しかし、耳を澄ますと古い玄関の戸が風で鳴っただけであった。