● 12年06月20日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №14 行列のできる法律相談所 北村弁護士来る ①



保険会社が交通事故で死んだ遺族に保険金を支払わない。私は訴状を書いて保険会社に送りつけた。そして言葉は丁寧だが、払わねば裁判をすると通告する。
昼食から戻ると事務員さんが言った。
「北村弁護士から電話がありました」
「北村、知らないな」
「先生、テレビで行列のできる法律相談所を見ていませんか。1番左に座って丸山弁護士と喧嘩をする弁護士ですよ」

「ああ、あの弁護士」
私は直ちに北村弁護士に電話をした。
「弁護士の安部です。何の用ですか」。
「保険会社から依頼をうけました。直接お目にかかってお話しがしたいので、日程を合わせていただけませんか」。
「それには及びません。先生は忙しいでしょうからイエスかノーか答えていただければいいです」。
「いえ、直接お話ししたいので、日程を合わせてください」。
「わざわざ東京から来られるのであればお会いしましょう」。
それから二か月後、北村弁護士が私の事務所にやってきた。名刺の交換を終えると私は切り出した。
「優秀な弁護士は何より現場を見たいでしょうから、あなたがわざわざ北九州に来たのは現場を見るためでしょう」
「いえ、現場はもちろん見たかったですが、先生にもお会いしたかった」
テレビのあの仏頂面とは違って笑顔で答える。テレビのあの顔は明らかに演技で本物は私よりはるかに愛想がいい。
「先生の事務所には何人弁護士がいるのですか」と聞くと「八人です」。私の事務所は4人なので負けたという顔をすると「ここの事務所は広くてきれいですね」とヨイショする。その後、北村弁護士は保険会社の言い分を話して帰った。

小倉タイムス より転載


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