● 12年06月30日 ひょうきん弁護士

ひょうきん弁護士2 №15 行列のできる法律相談所 北村弁護士来る ②



北村弁護士の言い分は以下のとおりである。
「自殺した本人は不倫をしていました。当日は不倫の相手と別れ話をして別れたのですが、未練があって相手の自宅に追いかけていって話をしようとしました。相手から拒否されると、玄関先で喚いて迷惑をかけました。そこで相手のお父さんが本人を説得し、自宅に送りました。本人がここでいいというので、途中で下ろしました。この日は雨が降っていたのですが、本人は車道を傘もささずにふらつきながら歩いていました。自動車の運転手はまさかこんなところを人が歩くとは思わないので、発見が遅れ交通事故になったのです。本人は彼女と別れたのがショックで自殺したのです」。
私は直ちに反論した。
「本人は34歳で、32歳の妻と4歳の男の子と2歳の女の子がいます。不倫の相手と別れたぐらいでは自殺しません。別れたことは悲しいでしょう。先生には不倫の経験がないでしょう。もちろん私にも経験はありません。けれども不倫の相手と別れたとき、やっとこれで妻子の元に帰れると考えたかも知れません。人は悲しくとも合理的な行動をします。妻と別れても自殺する人はあまりいません。ましてや不倫の相手と別れて死ぬ人はいません。交通事故の現場にはもちろん私も行きました。あそこは車道がトンネルになっていて、歩道が車道から離れて、先に行くに従ってどんどん離れて行きます。そこで彼は歩道を歩かず、トンネルの中に30センチほどの側溝があってそこを歩けるようになっているので、ここを歩いたと思われます。そして彼は酒に酔っぱらっていたので、車道に踏み込んで事故に遭ったのです。これは自殺ではなく、交通事故です」。
北村弁護士は言った。
「私は自殺と判断しておりますので提訴してください。ただ裁判の前に当方の言い分だけは聞いてもらおうと思ってまいりました」。
私は答えた。
「それはご苦労さまでした。それでは次は裁判所で会いましょう」。

小倉タイムス より転載


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