● 16年06月02日 労働法コラム
労働法コラム 第27回 退職金について
平山 博久 弁護士
退職金についてはこれを支給する会社が多数存在すると思います。
しかし、実は、退職金を支給するか否か、いかなる基準で支給するかについて直接規制する法令はなく、これを払うか否かは本来的に使用者の裁量に委ねられています。
2 しかし、①就業規則、労働協約、労働契約等で、②これを支給すること、更に、③その基準が定められている場合には、使用者に支払い義務が生じます。
また、①の就業規則等が無い場合であっても、(ア)、過去に退職した多数の労働者が受領した退職金の額に照らして、明確な退職金支給基準が存在し、当該事件の労働者について具体的な退職金額を特定でき、(イ)、(ア)の基準通りに支払うことが、使用者の法的義務であるという意識を両当事者が有している場合には、労使慣行として退職金請求権が認められる場合があります。
3 ところで、就業規則等において、一定の場合には退職金を支給しない(減額する)と定める会社も多いと思われます。
例えば、懲戒解雇の場合は退職金を支給しない(減額する)、と定めている場合です。この点、その不支給(減額)規程自体は有効と考えられています。
しかし、不支給(減額)規程が有効であるからといって、必ず、当該事案において不支給(減額)となるわけではありません。
すなわち、過去の裁判例においては、退職金不支給(減額)事由に該当する事実があったとしても、直ちに不支給・減額が認められるわけではなく、その不支給(減額)規程の適用範囲を限定して解釈しており、一般的には、当該不支給(減額)事由が、「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背信行為」であると認められるか、という点を考慮した上で、実際に不支給(減額)にすることが許されるか否かが判断されています。ですから、懲戒解雇の場合だから絶対に退職金の支給を受けられないわけではありません。
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