● 24年03月05日 労働法コラム

労働法コラム 第31回 教員の定額働かせ放題と過労死問題



 少し前まで、学校の電話は夜遅くまで「つながり放題」でした。今でも、いじめや不登校問題など困難を抱える生徒・保護者には教員からの連絡が時間外にあることもめずらしくありません。文科省の2022年度の教職員勤務実態調査の結果、いわゆる「持ち帰り業務」を含めると小中学校の教員の時間外労働の平均値は過労死ラインである月80時間を超えていました。
 
 公立学校教員の長時間労働を生み出す法的な要因と言われているのが「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」=「給特法」です。公立学校の教員には、原則的に時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、給料の月額4%に相当する額を「教職調整額」として支給することが定められています。
 
 給特法が定められた当時、教職員の仕事は自発性や創造性が必要であることや、勤務時間を単純に測定することが難しく、残業手当が支払われないことがたびたびあったことも踏まえて、勤務態様の特殊性を考慮してこのルールが定められました。ただ、この法律が施行されたのは今から50年以上も前。1966年当時、残業時間が月8時間程度だった時代の調査を踏まえての法律なのです。当時の状況と今は全く異なります。いわゆるブラック部活もなかなか改善されません。部活指導など実態としては労働時間であるものが「自主的活動」とされ、適正な労働時間管理もされていません。修学旅行の準備、引率で徹夜勤務が続き、ふらふらになっている教員、普段の業務もままならないのに町の美化運動やあいさつ運動と果てしなく仕事は増えていくのです。
 
 日本労働弁護団の意見書には「現在の教員の働く姿は、自らの健康や生活時間を犠牲にして『子どものため』であればいかなる犠牲も厭わず『やり甲斐の搾取』にあい、休日どころか休憩時間の概念も実質的に存在しないような労働条件で労務を提供し、自己犠牲の下に子ども達に尽くす教員達を美談のように扱う状況が止まらず、子ども達に労働環境におけるジェンダーバイアスを植え付ける可能性もある。このような教員の実情は、子ども達の『お手本』となる労働者・労使関係の姿であるとは到底いえない」と記載されています。
 
 給特法の廃止や抜本的な法改正において、当事者である教員やその家族の声が届くよう、そして学校を取り巻く私たちも、もっと教員の本来の業務でないものは減らしていこう、教員の残業代がきちんと払える仕組みとその予算の確保をしようと声をあげていきましょう。

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