付加金をめぐる最近の裁判例

弁護士 平山 博久
2025年5月執筆

1 労働基準法114条では、裁判所は、第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(時間外、休日、深夜の各割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第9項(年次有給休暇)の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる、とされています。
ですから、通常、労働基準法で支払うことが義務付けられている時間外等の割増賃金の支払を求める訴えを起こす場合、本来支払われるべき割増賃金等と同額の付加金を合わせて請求する、例えば、法令違反の時間外割増賃金が200万円と判断されるケースでは、付加金として200万円の支払いを求め、訴訟では、被告に対して、合計400万円の支払いを求めるということになります。

2 その制度目的は、法令上の支払義務を履行しない使用者に対し経済的な不利益を課すことで、その支払い義務の履行を促し、ひいては労働者の権利を保護することにあると考えられます。
しかし、全ての未払のケースにおいて付加金が認められるとはされておらず、また、裁判所が付加金の支払いを命ずることによって初めて付加金支払義務が発生すると考えられていることや、条文上も、「賃金を支払わなかった」ことが要件とされていることから、これまでの裁判例では、審理を終える(口頭弁論終結時)までに使用者が一応割増賃金等の支払をすれば、仮に、過去に使用者が割増賃金等について不払の事実が認められたとしても、裁判所は付加金支払の命令をすることはできないと考える余地がありました。
そのため、使用者が、割増賃金等の額を争う一方、付加金支払義務を免れるために暫定的に支払う等の対応を使用者がとることもあり、労基法に違反した使用者が付加金の発生をコントロールできるという意味で労働者保護としては十分とは言えない状況がありました。

3 これに対し、最近、注目される判断がでました。
一審で割増賃金を命ずる判決が出された後、控訴審において、強制執行停止決定を受けた後に弁済供託をしたケースにおいて、被告に支払いを命ずる一審判決が取り消されれば、弁済供託した金銭の取戻しをする意思があることが通常であり、弁済供託は、暫定的な弁済をする意思でされているとみるのが妥当として、使用者が、全くの任意弁済であると認められる特段の事情があるとはいえないとして、弁済供託したことの一事をもって付加金を命ずることができないわけではないとの判断をしました。
その他別のケースでは、控訴審において、口頭弁論終結後、一審判決が命じた割増賃金全額を弁済又は弁済供託する予定であるとして、使用者が口頭弁論再開の申し立てをするとともに、割増賃金に関する部分の控訴を一部取下げするとの書面を提出したケースで、大阪高等裁判所は、弁済又は弁済供託が完全な任意弁済として行われたと認める特段の事情があるとは認められない等として、弁論再開をせずに判決を言い渡しています。
このように、昨今の裁判例では、「全くの任意弁済であると認められる特段の事情」の有無を判断することで、使用者が、方便的に、付加金の発生を回避しようとする対応を否定する判断が出ているところです。

4 今後、最高裁の判断も出る予定ですので、今後の展開が注目されます。

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