傷害事件

僕は少しづつ強くなっていきました。腹が立つと自然に手が出るようになりました。
ある朝、食事をしているとこんちゃんが
「昨晩は何時に帰ったか」
「何の用事があったか」
といつものように追及を始めました。
僕は低血圧なので寝起きが悪い。それに、遅くなったのは純粋に仕事ですから、ますます機嫌が悪くなりました。
突然僕は立ち上がると、ものも言わずにゲンコツでこんちゃんの左肩あたりを五、六回殴ったのです。
肩あたりを殴ったのは、この付近は力いっぱい殴っても傷になりにくい、比較的痛くないという配慮からです。
びっくりしたのはこんちゃんです。しかし怯んだのは一瞬で、こんちゃんはそのまま家を飛び出して行きました。
どこへ行ったのか、仕事をしていても気にかかります。昼休みに自宅に電話してみたけれども、こんちゃんはいません。
「実家に帰ったのかな」と実家に問い合わせても行っていません。昼の二時、三時、何度電話してもこんちゃんは留守でした。
「どこに行ったのかな。ものも言わずに殴ったのは悪かったな。こんちゃんも気が短いからこれで離婚かな。離婚するとなると何だか喧嘩ばかりの夫婦生活だったな」と考えてしまいました。
さてやっと仕事から解放されて自宅に急いで帰りました。ピンポンと玄関のベルを鳴らすとこんちゃんが出て来ました。
あまりの嬉しさに「きょうはどうも済みませんでした。ちょっと寝起きが悪くて、申し訳ないことをしました。
今後私から手を出すことは決してしませんから許して下さい」
「じゃあ、私が先に手を出したら、私を傷物にしてもいいわけ?」
「いいえ、そういうことではありませんので、今後は決して反抗はしませんので許して下さい」
「あなた、別れたいならいつでも別れてあげるわよ。でも私はもう傷物になったから、慰謝料は高いわよ」
とこんちゃんが僕に渡したのは今日の日付の全治五日間の診断書でした。