ベランダ事件 その二

歴史は繰り返し、僕は同じ過ちを犯します。
こんちゃんからうまいことを言われてはベランダに誘い出され、ガラス戸を度々閉められました。僕は同じ手口に何度も引っ掛かる自分の愚かさにベランダで泣きました。
春、夏、秋と過ぎていきました。冬のベランダは寒いのです。
僕はこんちゃんに
「もう絶対に抵抗しないから、家に入れて下さい」と懇願しました。
「本当に抵抗しないね」
「はい、絶対に抵抗はしません」
「私がどんなことをしても抵抗はしないね」
「はい、あなたからどんな仕打ちをされても、絶対に抵抗はしませんので何卒家に入れて下さぃ」
「外は寒いか」
「寒いってもんじゃないよ。雪も降ってくる。このまま一晩ここで暮らしたら凍え死んでしまうよ」
「よし、分かった。絶対に抵抗しないと約束するなら許してあげる」
とこんちゃんはガラス戸を開け、毛布を一枚僕に投げ渡すと、また戸をピシャリと閉めてしまいました。
僕は仕方なく毛布一枚にくるまってベランダで眠れない夜を過ごしました。
寒い夜が明けた朝、マンションの子供たちが学校に行く時間です。子供達がマンションの下を通りかかると僕は
「おーい、助けてくれ」
と叫びました。
子供達はマンションの三階のベランダに僕を見つけると、
「あ、おいちゃん、また締め出されとる」と笑い
「おばちゃん、おばちゃん、許してやりよ」
と大声で呼びかけます。
こんちゃんは、
「おばちゃんじゃない。おねえさんでしょ」
と怒鳴りかえしながら、
「あんた、みっともない真似をしなさんな」
と、やっと僕を家に入れてくれるのです。