借金放置後の給料差押え、今からできること
弁護士 田邊 匡彦
2024年1月執筆
第1問
消費者金融会社からお金を借りていましたが支払いができなくなり、そのまま放置していましたが、最終支払いから6年後に消費者金融会社から支払督促が起こされ、それも放置していたところ、給料を差し押さえられてしまいました。どうすればいいのでしょうか?
第2問
上記の経過であっても、弁護士に債務整理を頼んで合意できずにそのままとなっていた場合はどうでしょうか?
1. 消滅時効の完成
最終支払の翌月には、期限の利益を喪失していると思われますので、期限の利益喪失後5年で消滅時効が完成しています。したがって、5年を経過した後は、消滅時効を援用すれば、支払い義務がないといえました。
2. 支払督促と消滅時効の関係
支払督促は、裁判所書記官が作成する簡易な裁判手続きであるため、執行力(これに基づいて強制執行できる)はありますが既判力(裁判所の判断について、違うとは言えなくなる)はありません。したがって、消滅時効完成後に支払督促があっても、時効完成後の中断(更新)はないことや既判力がないため、消滅時効を援用できることになります。
なお、少額訴訟でも判決が出されれば、既判力がありますので、裁判所からの呼び出しを無視して放置し、支払い義務を認める判決がでて確定してしまった場合は、既に消滅時効が完成していたとしても、その援用はできなくなり、判決の時点から新たに消滅時効のカウントが始まることになります。
3. 第1問の回答
消滅時効が援用できますので、給料差押えの執行停止と請求異議訴訟を提起して争うことが可能です。
4. 消滅時効完成前に弁護士に債務整理を委任し、解決しない間に時間が経過して消滅時効が完成した場合
弁護士が消費者金融会社に介入通知を出した場合、貸金業の規制等に関する法律や金融庁事務ガイドラインにより、直接の履行請求が制限されています。裁判所に訴訟を提起することは制限されていませんが、上記ガイドライン等に従い、その対応を待っていた間に消滅時効が完成した場合に、消滅時効の援用が許されるのかが問題となります。
この場合、消費者金融会社は「権利の上に眠っていた者」には該当しないとして、消滅時効を援用することは信義則に違反し、権利の濫用であって認められないという下級審判例があります。
信義則違反となるか否かは、具体的な事情を総合考慮して判断されることになり、ケースバイケースですが、信義則違反とされ、消滅時効の援用が認められない場合があることに注意が必要です。