相続人ごとに預金は引き出せる?父名義の預金払い戻しの可否

弁護士 田邊 匡彦
2025年1月執筆

父親が先日亡くなったのですが、自分の相続分に応じた割合であれば、父親名義の預金の払い戻しを受けることができるのでしょうか? なお、私は、3 人兄弟の長男で母は存命です。喪主を務めました。遺言はありません。

1. 預金は遺産分割の対象となる

以前は、預貯金は可分債権であり、当然相続分に応じて相続人が取得するとされてい
ました。したがって、遺産分割協議を経ることなく、相続分に相当する預貯金の払い戻しを請求できていました。

もっとも、金融機関は相続人全員の同意がないと払い戻しに応じていなかったので、実際には、裁判をする必要がありました。

しかし、平成28年12月19日付最高裁判決によって、判例が変更され、預貯金も遺産分割の対象となることになりました。したがって、遺産分割協議が整うか、調停成立や審判が確定しない限り、預貯金は払い戻しができなくなりました。

2. 例外的に払戻請求できる場合

最高裁判決の変更を受けて、当面、現金が必要になのに遺産分割協議に時間がかかる場合、一定の範囲で預金を引き出すことができる制度が設けられています。

引き出せる限度額は、預金残額×相続分×1/3です。

本件の場合、預金残高が2000万円であれば、2000万円×1/6×1/3=111万1111円が引き出せることになります。また、1金融機関ごとの引き出し限度額は150万円ですので、他の支店に預金があったとしても、150万円以上の引き出しはできません。他の金融機関からは、別途前記の限度で引き出すことができます。

この制度を使って預金を引き出すためには、相続人の確定が必要ですから、関係戸籍を集める必要がありますし、金融機関に引出を申し込んでも、実際に払い戻しを受けるためには、金融機関内の手続きで一定の時間がかかります。

3. 父親死亡直前の預金の引き下ろし

父親の承諾があれば、問題ありません。無断で引き出した場合は、民事上は父親に対する不法行為ないし不当利得に対象になります。刑事上は窃盗罪が成立するとしても親族相盗例により、処罰はされません。

4. 父親死亡後の預金引き出し

父親が死亡したことを隠して預金を引き出した場合も、他の相続人との関係で、生前の承諾のない場合と同じです。

引き出した預金を喪主として葬儀費用に支出した場合でも同じです。葬儀費用は死後に喪主が葬儀会社等と契約して支払うものであり、父親の負債とは言えないからです。

ただし、他の相続人が遺産から葬儀費用を出すことを認めれば、遺産からの支払いとして取り扱うことができます。

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