管理していた母の預金と不当利得について
弁護士 田邊 匡彦
2025年7月執筆
「既に父親は死亡し、私が母親を引き取って面倒をみており、途中からは施設に入ってもらっていたのですが、母が亡くなっ
た後、外の兄弟から私が母親のお金を勝手に引き出して使っていたので、それも含めて遺産分割すべきだと言われました。私はどのように対応すればいいのでしょうか?」
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遺産分割の対象財産は、𠩤則として被相続人死亡時の財産(負債を含む)が対象です。これに生前贈与があれば、特別受益として加算して、遺産総額を確定し、遺言がなければ、各相続分にしたがって遺産を分けることになります。
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もし、貴方が母親の預金を勝手に下ろして使っていたとされた場合は、母親が貴方に対して不当利得返還請求権を有していたことになり、それも遺産に含まれることになります。
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そのようなことを外の相続人から言われないためにも、貴方が母親の預貯金を管理するときには、自分の財産と母親の財産をきちんと分け、その出し入れについての出納帳を付けておく必要があります。
ただし、出納帳に記載がなく領収書がなくても、通常支出されることが推定できる支出項目については正当な支出として認められることが多いでしょう。
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いつから貴方が母親の出入金の管理をしていたかは、それを主張する側が立証する必要がありますが、無駄な争いをなくすためにも、いつから管理を始めたのかの資料も残しておくべきでしょう。
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長期間にわたり、不当利得していたとされる場合、債権の消滅時効は10年(但し令和2年4月1日以降は権利行使することができることを知った時から5年、権利行使することができる時から10年)ですから、それ以前の不当利得分は、消滅時効を援用すれば、支払い義務を負わないことになります。
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たとえば、兄弟姉妹(相続人)が3人の場合、貴方も母親の不当利得返還請求権の3分の1を相続するので、仮に900万円の不当利得が認定されたとしても、外の相続人に支払うべき金額は600万円となります。
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遺産分割調停手続きの中では相続人全員が同意すれば、不当利得金を含めた分割を成立させることが可能ですが、審判となった場合は、預
貯金と異なり、不当利得返還請求権は、可分債権であるため、当然相続分に応じて分割されていることになり、審判の対象とはなりません
別に地方裁判所(簡易裁判所)に不当利得返還請求訴訟が提起されることになります。
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なお、貴方がお母さんのお世話(介護)をしたことによってお母さんの遺産が減るのを防いだといえれば、本来の相続分に加えて寄与分を主張することが可能です。