養育費関係改正について
弁護士 田邊 匡彦
2026年1月執筆
養育費支払いを受け易くするための法律改正がされたそうですが、具体的にはどのように変わるのでしょうか?
1. 施行時期について
令和6年5月に成立した養育費関係の改正は、離婚後の父母双方に親権を認める共同親権の実施と同時に令和8年4月1日から施行されることが決まりました。
2. 養育費の先取特権化について
これまでは、父母の間で養育費支払いの取り決めをしていても、別居親が支払いを怠ったときには、調停調書、判決、公正証書等の債務名義がないと差押えができませでした。今回の改正で、養育費が先取特権(優先的に差押えができる権利)とされました。
施行後は、取決め書面さえあれば差押えの申立てができるようになります。但し、先取特権が付与される養育費の限度額法務省省令案では子供一人当たり月額8万円までとするとされています。実際の執行額は、合意額か法務省令で定めた額の低い方になります。
なお、改正法施行前に養育費の取決がされていた場合には、施行後に生じる養育費に限ってこの改正法が適用されます。
3. 法定養育費の制定
これまでは、父母の協議や家庭裁判所での調停・審判等で養育費の額を取決めなければ、養育費を請求できませんでした。しかし、改正法では、養育費の取り決めがなくても、①離婚時から協議成立又は審判で養育費の額が定まった日又は②子が18歳に達した時まで、毎月末日限り「法定養育費」を請求できるようになりました。法務省令では子供一人当たり月額2万円とされています。
法定養育費はあくまでも親同士が養育費を正式に決めるまでの間請求できる暫定的なものですので、決して標準的な額ではありません。それぞれの収入や子供の人数によって相当な養育費の額を定めるように努力すべきです。
また、法定養育費にも2で述べた先取特権の適用がありますので、養育費の取決め文書がある場合と同様に法定養育費を根拠として差押できることになります。ただし、これも改正法施行後の離婚のみに適用されます。
4. 請求を受けた側の減額請求について
法定養育費の請求を受けた者が支払い能力を欠くために養育費を支払うことができないことやその支払いをすることによって自らの生活が著しく窮迫することを証明した場合は、全部または一部の支払いを拒むことができます。家庭裁判所は、このような証明がなされた場合、義務者の支払い能力を考慮して法定養育費の全部または一部の支払いの免除または猶予その他の処分を命じることができます。
病気や失業等のため経済的に苦しい状況にある相手に対しては法定養育費であっても支払いを受けられない場合があるのです。