再転相続について
弁護士 田邊 匡彦
2026年7月執筆
「1年前に母が亡くなり、私たち兄弟3人が、相続人となったため、母名義の預金を下ろして3人で分けました。
ところが、その後、2年前に亡くなっている祖母(母の母)の債権者だという消費者金融業者から請求書が送付されてきました。私は祖母の相続人であった母の相続人として支払わないといけないのでしょうか?
1. 民法の規定
915条で相続を承認するか放棄するかは「相続開始があったことを知った時から3か月」以内に手続きをしない場合は承認したこととされています。この期間を「熟慮期間」といいます。
916条(再転相続)では、「相続人が相続の承認または放棄をしないで死亡した時は・・・その相続人が自己の為に相続の開始があったことを知った時」から熟慮期間が進行するとされています。
2. 本件の場合祖母の母への相続が1次相続、母の相続が2次相続となります。
判例(最高裁昭和63年6月21日判決)上、916条の対象となる1次相続は母自身の相続である2次相続とは別に独自に相続放棄ができるとされています。つまり、2次相続を承認していても、1次相続分のみを相続放棄することができるとされています。したがって、本件のように母親の預金を相続人として分けてしまっており、単純承認として母親の相続放棄はできない場合でも、1次相続である祖母の相続に関しては、相続放棄をすることが可能な場合があることになります。
3. 本件の場合、1次相続(祖母の相続)の放棄ができるか?
母が祖母の相続の熟慮期間内に死亡したときに916条が適用されますが、母が死んだのは祖母の死亡の1年後ですから形式的には熟慮期間の3か月を過ぎています。しかし、母が祖母の死亡を知らなかったときは勿論、祖母に財産も負債もないと考えて相続放棄をしていなかった場合や祖母の債権者から請求書の送付があっても3か月以内に母が死亡した場合には、祖母の相続人として相続放棄をすることができます。
この場合の熟慮期間の開始時期は、判例(令和1年8月9日付最高裁判決)上、「承認または放棄をしなかった相続の相続人の地位を自分が承継したことを知った時から進行する」とされていますので、祖母に負債があると知った時から3か月以内であれば、相続放棄することができます。
4. まとめ
本件の対応としては、第1に母親が熟慮期間内に死亡したか否かをまず確認すること、第2に熟慮期間を経過した後に死亡したことが確認できないときは、祖母の相続について相続放棄をしてみること、第3に祖母の債権者から通知を受けて3か月以内に相続放棄の申立てることということになります。