ひょうきん弁護士2 №118 第一章 身だしなみ

《くつ》

三千円より高いものは買ったことがありません。いつもバーゲンで買います。こんな靴でも間違えるやつがいるのです。

先日、弁護士大会が長崎で開かれ、帰ろうとすると靴がありません。仕方がないので便所の下駄をはいて帰りました。帰ると当然こんちゃんが追求します。

「靴はどうしたの」

「誰かが間違えてはいていった」

「私が、盗まれたら盗み返せとあれほど言っていたのに、まだ分からんとね。でも誰かが間違えたのなら代わりの靴があったろうもん」

「あったけど、ちょっと上等そうだったので割ると思って下駄にした」

「もう…。それほど下駄がいいなら明日から裁判所に下駄で行け」

《ネクタイ》

一本500円のネクタイを十本買いました。このネクタイに先日コーヒーがついたのでハンカチを濡らして拭いたら柄まではげてしまいました。さすが安物。

《背広》

前野弁護士がよく僕の背広が変色してみっともないと言っていましたが、僕がかまわずに着ていると背広をくれました。僕はニッコリ笑って受け取ると家に帰ってこんちゃんに怒りました。「前野のやつからバカにされたぞ。こんな前野のお下がりが着られるか。今度の日曜日、そごうに行って英国製の背広を作るぞ」

さて、そごうの仮縫い室、これは八畳の間ほどあり、店員からズボンを脱ぐように指示されて僕ははたと困りました。こんちゃんは僕が大穴の開いた股引きをはくたびに言っていました。

「そんなものをはいていたのでは妻の恥だから捨てなさい」

「これでもまだ使える。どうせ下着なのだから誰も見るものはいない」

「男はいつどんなことがあるかも知れないから、そんなものは捨てなさい」

「いいよ、いいよ。第一、この下着は浮気防止にもいいよ」

というわけで昭和十九年生まれのケチな僕は大穴の開いた下着をはきつづけていたのです。さて、しばし僕は考えて店員に

「ちょっとすみませんが、急用ができたので今度にします」

と仮縫い室を脱出しました。それから僕は、もったいないので前野弁護士がくれた背広を着ています。

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