労働法コラム 第13回 福岡の労働者が危ない

弁護士 平山 博久

1  皆さん、怖いタイトルを付けましたが、国家戦略特別区域法・同基本方針という言葉を聞いたことがありますか?

これは政府が平成25年末から平成26年にかけて法令等を整備した制度であり、国内外から人と企業を呼び込み、産業の新陳代謝を促し、産業の国際競争力を強化すると共に、更なる雇用の拡大を図ることを目的とした制度です。平成26年5月1日、福岡市も国家戦略特区に正式に指定されています。

さて、これだけ聞くと「よい話では?」と思う方、「北九州は関係ないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

ところがこの特区制度は日本の労働者保護を考える上で大きな危険をはらんでいるのです。

2  まず戦略特区に指定された地域では、参入しようとする企業が労働者との間で雇用にかかるトラブルを予想できるよう雇用・労働相談センターを設置し、同センターで企業の相談を受け、相談に当たっては政府が定めた雇用指針を活用するとされています。

しかし、その雇用指針には、使用者の重大な義務である安全配慮義務の規定、労働組合に関する規定が一切書かれておりません。

これでは、参入企業が、昨今問題となっている、長時間残業、過労死、過労自殺、パワーハラスメント等の労働契約に密接に結び付く問題を予見・回避することはできず、労働者が苛酷な環境におかれることが予想されます。

また解雇に関する規定についても、これまでの裁判例の積み重ねで構築されてきた解雇に関する考え方について誤った整理をしたり、使用者勝訴の判例が偏って引用されており、使用者に日本の労働契約法制に関して誤った予測を与える内容となっています。

3  他にもこの制度には様々な問題があります。この制度については首相官邸ホームページで多数の資料を見ることができますので、是非、一度、目を通してみてください。

現在、政府は、労働者保護のための解雇制限法理や労働時間制限等の既存の規制を緩和しようしています。その動きと合わせて考えれば、今回の特区問題は単に福岡市の問題ではなく、北九州の問題でもあり、ひいては日本の労働者保護法制に結びつく問題なのです。

政府の誤った雇用指針に基づく運用がなされ、日本の労働者保護が揺るぐことのないよう私たちは政府の動向を注視する必要があるのです。

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