もしも身近な人が「被害者」になったら
弁護士 東 敦子
2025年9月執筆
交通事故にあったとき、通常は保険で休業補償がなされます。その他の事件や事故でなどで怪我をして働けない場合も仕事を休んだり、傷病手当を申請したりできます。一方で、窃盗や盗撮の被害者や子どもが犯罪被害にあった親など被害者家族は、仕事を休みづらいのが現実です。
例えば、職場の同僚から、控室で金品を盗まれたり、更衣室で盗撮されたりした場合、被害に合われた方は被害そのものに対する損害や苦痛だけではなく、職場に出勤し、その場所で過ごすこと自体が精神的苦痛を伴います。そればかりか、職場の人たちから「仕事に集中した方が忘れられるよ」「もっと辛い思いをしている人もいる」などの悪意のない「励まし」に傷つき、退職に追い込まれる人もいます。
国は、各自治体に対して、犯罪被害者支援に関する施策の充実を求めており、犯罪被害者支援に関する特化条例の充実や新設は急務となっています。条例を作ることや施策を進めることは国や地方公共団体の仕事ですが、私たちの身近な職場の同僚や部下が被害にあったとき、休みやすい職場、働きやすい職場であるためにできることがあります。
「被害にあった子ども(高校生)を一人家において仕事に行くことがとても心配だけど、小さい子どもじゃないからどこにも預かってもらえない」「職場の荷物置き場には個人用ロッカーすらないのに『貴重品管理を徹底して』と言われた」「身体の傷は目に見えるけど、心の傷は気づいてもらえない」などの声があがっています。いつ、誰が、どんな被害にあうのかは誰もわかりません。被害者やその家族には、働くという日常の場もあります。その日常において、トラウマを受けた人がどのような状況におかれるのかを理解し、その心情や困りごとを理解したうえで接していくことが求められています。
一人一人の困りごとに寄り添うなんてできない・・・ではなく、そういったことができる職場は働きやすく、誰もが協力しあえて、持続可能な環境という意識をもっていけたらと思います。