労働者性について
弁護士 平山 博久
2026年6月執筆
1 はじめに
今回は、労働者性をめぐる考え方や、昨今の動きをお話しします。
2 労働者について
- まず、労働基準法上の労働者は、「事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者」を指し(9条)、契約形態に関わらず実態で判断されます。
- 次に、労働組合法上の労働者は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(3条)とされており、(1.)の労基法上の労働者より広い概念と考えられます。
3 区別の実益
労基法上の労働者性が認められることで、労基法、労働安全衛生法、労災保険法等労働者保護関連法規の適用があります。他方、労働者性が認められなければ、一般法である民法等の契約法理で対応することになるため、その権利基盤は弱くなると考えられます。
4 判断基準
- 労基法上の労働者性のポイントは、「事業」、「使用される」、「賃金」という3点ですが、この点については、様々な考え方があり、裁判所は、使用者による指揮監督下にあるかどうかを注視して考える傾向にあり、一般的には、使用従属性は、指揮監督下の労働をし、その対価として報酬(賃金)を得ているか否かによって判断されると考えられます。
- この点、よく使用者が、業務委託契約とか、請負契約という契約書にすることで、労働契約ではないという主張(偽装フリーランス)することを目にしますが、これについては、
ア 使用者の指示に対する諾否の自由の有無(指示を拒否できる場合は、労働者性を否定する事情に傾く)。
イ 業務の具体的内容・遂行方法、会社の情報把握の有無・程度(全て会社の指示により、その業務内容を把握されている場合は、労働者性を肯定する事情になります)。
ウ 勤務時間に関する定め・使用者による管理の有無(会社によって労働時間が定められ、タイムカードなどで管理されている場合は労働者性を肯定する事情となります)。
等が判断基準になると考えられます。
5 行政の動き
- 以上の通り、様々な観点から、個別具体的に労基法上の労働者性を判断することになりますが、事案をパッと見て、その人が労基法上の労働者であるか否かが分かる仕組みがあった方が、不当な権利侵害を受けないと考えられます。
- そこで、現在、厚労省で、「労働基準法における労働者に関する研究会」が定期開催されており、①労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究、②プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析、③労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方、④新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策が検討されています。
- その中で、実務上は、④の労働者性判断の予見可能性を高めるという観点が重要と考えています。上記の偽装フリーランスで労働者の権利基盤を破壊する動きもある以上、労働者性の推定規定についても検討されているところで、労働者側の労働者性の立証責任の負担を軽減していく必要があると思います。
- 今後も、労働者性については様々な裁判例や行政の動きがあると思いますので、注目していきましょう。